「眺めのいい部屋」とプッチーニのアリア [映画]
声楽を始めて一年くらいの頃に「眺めのいい部屋」という映画を観ました。
英国風の雰囲気に惹かれて観たのですが、はじめから使われている音楽に興味があったわけではありません。
ヒロインはイギリスの上流階級の娘で、フィレンツェに旅行に行きます。
ペンシオーネ(宿)でアルノ川沿いの眺めの良い部屋をめぐってアメリカ人新聞記者の父子とトラブルになります。
その息子とヒロインが恋におちる、というストーリーなのですが、育ちの良いヒロインは彼の求愛にすぐには応じません。イギリスにすぐ帰ってしまったりします。そしてやはり育ちの良い男性との結婚話があり、婚約します。
しかし結局は新聞記者の息子のもとに行く・・・という、意外と単純なストーリーなのですが、上流階級のお嬢様が恋を知り、葛藤し、初めてのキスに心をときめかしていく様が素晴らしいオペラアリアによって見事に表現されているのです。
使われているオペラアリアはプッチーニの「私のお父さん」(ジャンニ・スキッキ)と、「ドレッタの素晴らしい夢」(つばめ)でキリ・テ・カナワによる演奏です。
私はこの映画のおかげでキリ・テ・カナワを知ったようなものです。
「ドレッタの素晴らしい夢」は青年との情熱的なキスシーンで使われていて、本当に素敵です。
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Chi il bel sogno
Chi il bel sogno di Doretta 誰かドレッタの夢がどんなものか
potè indovinar ? お分かりになって?
Il suo mister come mai fini ? 彼女の不思議は一体どうして消えたのでしょう。
Ahimè ! Un giorno uno studente ああ、なんと、ある日ひとりの学生が
in bocca la baciò 彼女の唇に口づけし
e fu quel bacio rivelazione: その口づけがまさに目覚め
fu la passione ! そして熱情だったのです。
Folle amore ! Folle ebbrezza ! 狂おしい恋!狂おしい陶酔!
Chi la sottile carezza 誰にこんなに熱い口づけの
d'un bacio così ardente ほのかな触れ心地を
mai ridir portà ? 言い表すことができましょう。
Ah ! mio sogno ! Ah !mia vita ! ああ、私の夢、わたしの人生!
Che importa la ricchezza 富にどれほどの意味があるでしょう、
se ai fin è rifiorita la felicià ! 幸福がついにまた花開いたなら!
O sogno d'or poter amar così ! .....こんな風に愛せるのが、すてきな夢!
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まさにこの歌詞にぴったりの状況で使われていますね。
(キスの後、青年をひっぱたいてにわか雨の中ずぶぬれになって帰るのですが・・・。)
またこの時のドレスも素敵なのです!
19世紀英国風の襟の高いレースのような素材のドレス。
そして白いパラソル。
髪型も素敵でした。
この時のパンフに衣装がまさに彼女の内面を表している、と書かれてあったような記憶があります。
最後には青年とフィレンツェに駆け落ちして結ばれるのですが、その時は襟の開いたドレス。
彼女の心が開かれていることを表している・・・とか。
そして有名な「私のお父さん」ですが、歌詞の中にアルノ川も出てきますし、これまたぴったりの曲ですね。(この二曲をもとにつくった映画ではないか、とさえ思います。)
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O mio babbino caro
O mio babbino caro, 私の大好きなお父様
mi piace, è bello, bello; とても素敵な、素敵な人なのよ。
vo'andare in Porta ポルタ・ロッサに
a comperar l'anello ! 指輪を買いに行きたいの。
Sì, sì, ci voglio andare ! ええ、ええ、どうしても行きたいの。
e se l'amassi indarno,もしできなければ
andrei sul Ponte Vecchio,ポンテ・ヴェッキオに行って
ma per buttarmi in Arno ! アルノ川に身を投げるわ!
Mi struggo e mi tormento ! 彼を思い焦がれて苦しんでいます。
O Dio ,vorrei morir ! ああ、死にたいわ!
Babbo, pietà,pietà ! お父様、お願い。
Babbo, pietà,pietà! お父様、お願い。
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- アーティスト: カナワ(キリ・テ), プッチーニ, ナガノ(ケント), 国立リヨン歌劇場管弦楽団, ヴィニョールズ(ロジャー)
- 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
- 発売日: 2004/01/21
- メディア: CD
ドレッタ。。。最近、先生にやってみたらって言われた曲です。
みどにはまったくその気はありませんが。。。
いつかコンクール用に仕上げようかと思っています。
by みど (2006-03-22 14:15)
みどさん、コメントありがとうございます!
私も歌いたくて楽譜を買ったし、一度はイタリア人の先生にも見ていただいたこともあるのですが、高すぎて歌えません!!
中丸三千絵さんのCDも持っていますが、憧れます!
みどさんのドレッタ、是非聴きたいです。
by Cecilia (2006-03-22 15:23)
コメント、ありがとうございました。覗いてみてびっくり。とっても充実したしかも美しいブログですねぇ。私は一昨日立ち上げたばかりのブログ超初心者です。いろいろと参考にさせていただきます!森麻紀さん、私も好きです。お上手だし、お美しいし。去年はオペラシティでバッハコレギウムジャパンとのバッハのカンタータ、今年は水戸の芸術館でニューイヤーコンサートに行きました。また、おじゃまさせてください。では~
by スザンナ (2006-03-23 22:44)
スザンナさん、コメントありがとうございます!
覗きに来ていただけてうれしいです。
参考になるものはあまりありませんが・・・音楽好きの皆様との交流も多いので、皆様のブログを参考になさってください。
水戸の芸術館の方にお住まいなのでしょうか?
バッハ・コレギウム・ジャパンは米良さんがらみでCDをたくさん持っているのですが・・・一度も生演奏を聴いたことがありません。
これからもよろしくお願いいたします。
by Cecilia (2006-03-24 00:15)
ceciliaさんも、御覧になってたんですね、僕も公開当時見ました。好きな映画の1つで自身のブログにも・・・、声楽モノを聴くキッカケになた・・・、そして趣味のオーディオも声楽を聴き始めて1段・2段聴く耳が肥えた、とても印象に残る作品です
by アートフル ドジャー (2006-10-28 19:40)
アートフル ドジャーさん、nice&コメントありがとうございます!
映画もお好きのようですね。
私はこの映画を見たころは声楽は習いたてでしたが、この映画でかなりはまりました。
この頃からプッチーニのこれらの曲の人気が上がったと思うのですが、その後のオペラブーム、イタめしブームもこの頃から・・・という感じがしました。
"O mio babbino"は初歩の人も歌いやすい曲ですが、「ドレッタの素晴らしい夢」はかなり高音で、つらい曲です。でもいつか歌えるようになりたい・・・。
by Cecilia (2006-10-30 08:14)
こういう内容の歌詞だったのですね!
これを知ってから観ると、さらに深く 映画の内容を理解できそうです。
衣装にも、彼女の気持ちや境遇の変化が表されているというのも、目からウロコでした。
ナイス記事です!!
by びっけ (2009-04-26 00:46)
びっけさん、nice&コメントありがとうございます!
歌詞を知ってからだとより映画が楽しめますよね。
更にヒロインはピアノを弾いていましたが、曲はベートーヴェンの何と言う曲だったかなあ・・・と気になっています。
私は「エマ」(メイドが主人公の漫画)との関連でこの映画をもう一度見たいです。
19世紀後半~20世紀初頭のイギリスの階級社会・・・という視点から。
by Cecilia (2009-04-26 07:45)