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緑川まり&米良美一 おしゃべりデュオコンサート [音楽鑑賞]

「緑川まり&米良美一 おしゃべりデュオ・コンサート」に行ってきました。

もちろん米良さんのファンだから行ったのですけれど、緑川さんには以前から大変興味がありましたので、かなり期待して行きました。伴奏の長町順史さんの演奏を聴くのは初めてなのでそれも楽しみでした。最近はピア二スターHIROSHIさんとか塩入俊哉さんの伴奏で聴くことが多かったですが、以前のコンサートではたいてい北原葉子さんの伴奏でした。北原さんに事情ができたのかここ2~3年以上は長町さんが伴奏されていますが、私は生で聴いたことがありませんでした。
まずは音楽的なことに関する感想から書きたいと思います。

個人的に緑川さんのソプラノが聴けて本当に良かったです。私は最前列に座っていましたが間近で歌っている姿勢や表情を眺めることができて大変勉強になりました。
コンサート前に緑川さんの写真を見ていろいろ想像していましたが、想像では明るく華やか(派手)な歌い手さんでした。実際明るく華やか(派手)な部分もあるのですが、声質は案外暗いところもあって、”底抜けの明るさ”とは質が違います。例えるならビロードのような声でしょうか。米良ファンの皆様も一様におっしゃっていましたが、「キンキンしてないので聴き易い」声でした。ドイツリート(シューベルトの「鱒」)やフランス歌曲(R.アーンの「クローリスへ」)が素晴らしく、イタリア物も良いのですが(プッチーニの「私のお父さん」やナポリ民謡「オー・ソレ・ミオ」)、私はこの方は歌曲や宗教曲が向いていると感じました。華やかな外見ですが声はとても清楚な感じでちょっとギャップも感じましたが、更に暗さ(語弊があるかもしれませんが)も感じたのですね。声質はリリコ・スピントでしょうか。トスカとかアイーダなんかを主演されているようですが。

緑川さんは歌う時にあまり顔の動きがなく、米良さんとは対照的でした。最後のほうではゼスチャーもありましたが両手を両脇に下ろしていることが多かったです。体の筋肉の動きは豪華な衣装のせいでわかりませんでしたが、とにかくいかにも体を使って歌っていますというのが見えない方でした。しかし「赤とんぼ」では本当に”支え”を使って歌っているというのがよくわかりましたね。顔の話に戻ると、無意味にニコニコしながら歌う”頬骨を上げた”歌い方でなかったです。素顔の緑川さんはとてもニコニコされているのですが、歌う時はあまりニコニコされていなかったです。もともとの骨格も良いのかもしれませんが、やや顎を引き気味にされている程度で口もあまり開いていませんでした。ある意味とても自然体な表情でした。それでも低音から高音までしっかり芯の通ったソプラノの音色でしたし、発音がまた素晴らしかったです。これは米良さん(米良さんの発音の良さも多くの方が評価されていますが)も絶賛されていましたが、知らない言葉でもわかったような気持ちにさせていただけました。聴いていて子音がとても心地よく、私が曲としてはそんなに好きでない「鱒」もとても楽しめました。緑川さんを見ていると一生懸命口を動かさなくても子音を立てた発音ができるんだなあと思います。(この件に関しては弓場徹先生もおっしゃっていたと思います。)

米良さんは童謡とか昭和歌謡中心に歌われていて、最初から脇役に徹しておられる印象でした。
二重唱は「アヴェ・マリア」(グノー)、「山の音楽家」、「アメイジング・グレイス」、「ゴンドラの唄」、「紅葉」でしたが、二人の声の質は合っていたと思います。ただ微妙に・・・本当に微妙なのですが、若干ハモれてないところがあったような気もします。長町さんの伴奏は素晴らしい伴奏でしたが、特に二重唱の時に何となく合わない箇所があったような気がします。ミスタッチなのか何なのかちょっとわかりません。いずれにしても微妙な所の話なので私の気のせいかもしれません。そうそう、ソプラノとカウンターテナーなので当然緑川さんが主旋律です。

長町さんのピアノで感心させられたのはシューマンの「献呈」のリストのトランスプリクションです。もとはシューマンの歌曲ですがリストが編曲しているものですね。ピアノだけでなく声楽も学ばれているだけあって、歌を知り尽くしての演奏で素晴らしかったです。そういえば「献呈」の最後の部分にはシューベルトの「アヴェ・マリア」の歌の出だしを思わせる旋律がありますよね。それを思い出し一人でにやけていました。また二部ではコスマの「枯葉」のジャズ編曲版(藤井英一)を弾かれたのですが、そちらも素敵でした。

そして米良さんの独唱に関してですが、この日の米良さんはとても声が乗っていたと思います(二日前にもコンサートがあったようですが)。カウンターテナーの米良さんを期待している方はちょっと残念だったと思うのですが、「もののけ姫」は4度くらい下げて歌っておられましたね。また「見上げてごらん夜の星を」もCDに収録されているものと比較して5度くらい下げて歌っておられるように思いました。「見上げてごらん夜の星を」はともかく、「もののけ姫」を低く歌うのはかなり勇気の要る決断だったと思うのですが、音楽的に歌うことを優先されたのだと思います。童謡の歌い方はかなり独特で演技が入っていました。あれもアリだと思いますが、声も乗っていたので普通に歌ったほうが良かったような気がします。米良さんの歌では「ひとり寝の子守唄」が良かったです。


以下はプログラムです。(作詞者・編曲者は省きます。)
デュエット緑川ソロ米良ソロ長町ソロ
アヴェ・マリア(バッハ・グノー)
山の音楽家(ドイツ民謡)
サッちゃん(大中恩)
ぞうさん(團伊玖磨)
たき火(渡辺茂)
献呈(シューマン・リスト)
私を泣かせてください(ヘンデル)
鱒(シューベルト)
クローリスへ(R.アーン)
アメイジング・グレイス(黒人霊歌)

~休憩~

ゴンドラの唄(中山晋平)
四季の歌(荒木とよひさ)
ひとり寝の子守唄(加藤登紀子)
見上げてごらん夜の星を(いずみたく)
ピアニッシモの秋(中田喜直)
さびしいカシの木(木下牧子)
赤とんぼ(山田耕筰)
枯葉(コスマ)
もののけ姫(久石譲)
私のお父さん(プッチーニ)
紅葉(岡野貞一)

(アンコール)
ヨイトマケの唄(丸山明宏)
オー・ソレ・ミオ(ナポリ民謡)
ふるさと(岡野貞一)←全員合唱

「私を泣かせてください」「クローリスへ」は米良さんの歌で聴きたかったですが、緑川さんの歌で満足できました。でも正直童謡と昭和歌謡ではなく芸術歌曲やアリアを歌ってほしかったと思う私です。米良さんもこのところ昭和歌謡のコンサートが多く、それはそれで素敵なのですが、緑川さんとの組み合わせで考えたらかなり不満の残る選曲でした。金太郎姿を見ることができたのはいいのですが(初めて見ました!)、ドレスの緑川さんの隣で金太郎はちょっと・・・。
緑川さんが歌われた「さびしいカシの木」ですが、私が知っている歌とは違うメロディー(木下牧子作曲)でした。
私は鮫島有美子さんのCDなどで西脇久夫作曲のほうでなじんでいました。「ピアニッシモの秋」は初めて聴きましたが素敵な曲で気に入りました。

二人とも何度もお色直しをしていて視覚的にかなり楽しめました。
緑川さんのドレスは名古屋で作られているということでしたが、この日のドレスもすべてそうでしょうか。
羽のついた茶色のドレス、中世のお姫様のような袖のパフスリーブ部分に特徴のある茶色っぽいドレス、着物地を使った黒いドレス(襟まきトカゲのような襟は膨らんでいて触ってみたかった!スカート部分は柄のついた生地と黒い生地が交互になっていてプリーツスカートのような感じになっていました。胸元には男性の羽織についているような白い房が!)、これまた中世のお姫様のような赤っぽいドレス・・・と4着ですが、素敵でした。
米良さんは最初が金太郎(!)、青いスーツ(光る素材)、赤い着物(頭には赤い花)、市松模様のスーツ(正面は赤白・背面は黒白)でした。
それぞれ順番に書いていますが、二人でその順番の組み合わせで舞台に立っているところを想像してください。

またトークですが、さすがに米良さんは慣れたものでしたね。緑川さんは歌が終わるとぽ~っとされているようでした。でも歌が素晴らしかったので良いのです!

コンサート終了後は”出待ち”をしましたが、米良さん・緑川さん・長町さんそれぞれとお話ができました。
緑川さんに言い忘れたことが一つ。「出来ることなら弟子入りしたいです。」
正直日本人ソプラノで弟子入りしたいとまで思える方にはめったにお目にかかれないのです。(単に聴く機会がないからなのですが。)

聴いてみたいです。(緑川さんが出演しているヘンツェの「午後の曳航(えいこう)」

ヘンツェ:午後の曳航 (Henze : Gogo no Eiko) (2CD) [Import CD]

ヘンツェ:午後の曳航 (Henze : Gogo no Eiko) (2CD) [Import CD]

  • アーティスト: Mari Midorikawa,Jun Takahashi,Tsuyoshi Mihara,Teruhiko Komori,Zvi Emanuel-Marial,Kwang-Il Kim,Yasushi Hirano,Hans Werner Henze,Gerd Albrecht,Orchestra Symphonica Nazionale della RAI
  • 出版社/メーカー: Orfeo
  • 発売日: 2009/11/20
  • メディア: CD



こちらで全曲試聴できます。



(追記)

アンコールの後全員合唱「ふるさと」がありましたが、9月に行ったコンサートの時の「ふるさと」は一般には高すぎ(私にはちょうど良かったけれど喉痛でまともに歌えなかったです。)でしたが、今回は一般の人に歌い易い高さでした。私には低すぎてやはりまともに歌えませんでしたが。でも緑川さん、米良さんと一緒に演奏している気分を味わうことができました。目の前に米良さんが来られたし。

noripさんも記事を書いておられます。(こちら


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コメント 15

にゃん

お疲れ様でした。
楽しめるコンサートでしたね。
私も米良さんにはこういう時はクラッシックで纏めて欲しかったです。
「もののけ」も安心して聴きました。絶対にありだと思います。
ジュンジュンさんの伴奏私はとても好きです。
たまに?はありますが歌手の持っている何かを引き出す力がある様な気がします。ソロも…特に彼のドビュッシーが大好きなのです。(彼にはドビュッシーフリークだと言われましたが、彼のドビュッシーじゃないとイヤな位です。)
ジュンジュンさんは関西方面でコンサートしています。
まりさんのソロも是非聴きたいですよね!来年に期待しませう!
ステージの掛け合い漫才…?普段のまんまに感じました。

by にゃん (2011-11-06 09:51) 

Cecilia

にゃんさん、コメントありがとうございます!
ジュンジュンさんのドビュッシー、是非聴きたいです。ドビュッシーはピアノ曲も好きですが声楽曲も素晴らしいのです。「家のない子らのクリスマス」などもジュンジュンさんの伴奏で聴いてみたいです。(ソリストは米良さんか緑川さんどちらでもよさそうですね~。)
このお二人も含めて米良さんの名古屋方面でのコンサートが来年もたくさんありますように。
今年は珍しく年に3回も米良さんのコンサートに行くことができました。
緑川さん、お友達になれそうな雰囲気が素敵な方ですね。(笑)
by Cecilia (2011-11-06 10:03) 

Cecilia

yu-papaさん、niceありがとうございます!
by Cecilia (2011-11-06 17:18) 

norip

楽しかったですね~~~♪
Ceciliaさんが如何に楽しまれたかよ~く分かります(笑い)

さっちゃんの歌

私もねふざけた歌い方が気になっていた時期がありました。
でも何度も聴いているとこれはふざけているのじゃなくて
さっちゃんとこの男の子の会話がこうだったんじゃないのかな~と
思うようになりました。だから僕を忘れそうな・・
いえ忘れてしまうに違いないだろうさっちゃんに
怒ったようなすねたようなあのような歌い方になったのだと・・・。
by norip (2011-11-06 20:12) 

U3

読み応えがありました。
そして、久し振りにコンサートを見に行きたくなりました。
by U3 (2011-11-06 22:21) 

Cecilia

xml_xslさん、niceありがとうございます!
by Cecilia (2011-11-07 08:07) 

Cecilia

noripさん、コメントありがとうございます!
楽しかったですね~。
私は米良さんと緑川さんにいろいろと勉強させてもらった気持ちです。

>怒ったようなすねたような

感情の性格が違うかもしれませんが「さっちゃん」以外の童謡での表情・歌い方もそんな感じですよね?私にはまだ米良さんの意図するところがわかりません。気になるほうが先に立ってしまって。それから金太郎衣装が邪魔になって理解を妨げているようにも思います。う~ん、金太郎はやはり後半にちょっとお遊びで・・・が良いと思います。
いずれにしても米良さんは歌い手であると同時に役者だと思います。歌だと思わずに演技だと思えば良いのですが、米良さんは歌の力だけでもやっていける方だと思っていますので過剰な演技は不要ではないかとも思うのです。まああの演技が魅力でもあるのですが。
他の曲に関しては「さすが米良さんだ~。」と思うだけなのですが、初めて聴く米良さんの童謡&金太郎姿が素直に受け容れることが出来ない私でした。

緑川さんが出演している「神々の黄昏」(ワーグナー)の動画が・・・。
http://www.youtube.com/watch?v=6v6dMd9QlvI
by Cecilia (2011-11-07 08:19) 

Cecilia

U3さん、nice&コメントありがとうございます!
コンサートを聴くだけでなく観る楽しみもありますよね。
by Cecilia (2011-11-07 08:20) 

伊閣蝶

Ceciliaさん、こんにちは。
素敵なコンサートを楽しまれたとのことで、本当にうらやましく存じます。
緑川さん、あまり口を開けずにアクションも控えめで、しかし芯のあるすばらしいお声の持ち主のようですね。
私はまだお聴きしたことがありませんが、子音をきれいにきちんと意識してお歌いになるというところが、聴衆にとっては嬉しい限りと思います。
米良さんも、今回は緑川さんをお立てになった面が多かったのでしょうけれども、低音で歌う「もののけ姫」など、また違った面での表現も試みられたとのことで、さすがだなあと感じました。
ところで、ヘンツェというと、午後の曳航がやはりすぐ思い浮かびますね。
あと、シマロンも思い浮かべたのですが、残念ながら、私はこの曲を聴いたことがありません。本を読んで知っているだけなので。
by 伊閣蝶 (2011-11-07 12:12) 

Cecilia

伊閣蝶さん、nice&コメントありがとうございます!
上のnoripさんへのレスに緑川さんの歌が聴ける動画のURLを貼り付けました。ご興味がおありでしたらご覧ください。
記事では宗教曲や歌曲に向いていると書きましたが、いろいろなオペラに出演されていますね。ワーグナーやリヒャルト・シュトラウスあたりもお得意のようです。そのあたりが得意な方には強靭な声の持ち主という印象があったのですが意外でした。ちなみに動画ではコンサートの時よりも口を開けていらっしゃいますし、顔の筋肉をもう少し使われていますね。
とにかく美しい子音はそれだけで音楽的な魅力がありますね。
ヘンツェの「午後の曳航」をすでにご存知とはさすが伊閣蝶さんです。三島由紀夫の原作、読んでみたいと思いました。
緑川さんたちの「午後の曳航」はヨーロッパ各地で結構評判になったようですね。
by Cecilia (2011-11-07 16:02) 

March Hare

緑川さんの単独のコンサートは聞いたことはありませんが、確か2回生で聴いています。
その内の1回は、昨年、上野の奏楽堂で米良さんのコンサートがあった時(ピアノは長町さん)に観客として来ておられて、アンコールで米良さんが客席から招いて、「花」をデュエットされました。
非常に聞きやすいソプラノだったと記憶しています。
by March Hare (2011-11-11 18:00) 

Cecilia

March Hareさん、コメントありがとうございます!
皆様もおっしゃっていましたが、March Hareさんも聞きやすいソプラノと思われたのですね。コメント欄に動画をリンクしておきましたが、ワーグナーが得意な歌手って苦手なタイプであることが多いのです。でも彼女の場合はそんな気がしないのが不思議です。
by Cecilia (2011-11-12 05:21) 

九子

こういうところから入るとクラシックの垣根も軽減されるんですねえ。
とても楽しそうですね!( ^-^)
by 九子 (2011-11-15 22:44) 

Cecilia

九子さん、nice&コメントありがとうございます!
クラシック初心者の方にも楽しんでいただける内容だったのではないのでしょうか。楽しいコンサートでした。
by Cecilia (2011-11-16 08:37) 

Cecilia

ユーフォさん、niceありがとうございます!
by Cecilia (2011-11-18 08:20) 

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