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「花の詩史」・・・山中哲夫 [読書]

図書館から今、この本を借りてきています。

ヨーロッパ文学 花の詩史―詩にうたわれた花の意味

ヨーロッパ文学 花の詩史―詩にうたわれた花の意味

  • 作者: 山中 哲夫
  • 出版社/メーカー: 大修館書店
  • 発売日: 1992/10
  • メディア: 単行本


まだ全部は読んでいないのですが、ずっと気になっていたことがわかり、大変参考になる本です。

Ⅰ中世の花(五月に日の長くなる頃、南仏抒情詩人と宮廷恋愛、モロワの森の恋人たち、『薔薇物語』と愛のトポロジー)
Ⅱルネサンスの花(ベルリの泉、ギリシアの薔薇・青春の薔薇、宮廷の花、リヨンの恋)
Ⅲバロックの花(花と髑髏、燈心草の水影、花の神話のコンプレックス、サロン詩の誕生)
Ⅳロココの花(磁器の花・香水の花、「ヴォーの夢」からエルムノンヴィルの庭園へ、ルソーの幸福の青い花、革命の花=精神の花)
Ⅴ近代の花(野の花、見果てぬ愛の夢、異国の薫香、都市の胸像、印象主義の花、世紀末の花)
Ⅵ現代の花(ベル・エポックの花、薔薇の変容とミモザの砲弾、シュルレアリズムの花・あるいはひまわりの夜、抵抗の花)

どうです?
章ごとの題名を見ただけで、読みたくなりませんか?

そしてこの本で扱われている花は次の通り。

アイリス、紫陽花(あじさい)、アスター、アネモネ、あやめ、アンコリー(→おだまき)、ウィステリア(→藤)、ヴェロニカ、金雀枝(えにしだ)、カトレア、カーネーション、黄水仙、金盞花(きんせんか→マリーゴールド)、グラジオラス、けし、サンザシ、三色すみれ(パンジー)、ジャスミン(茉莉花)、すいかずら、水仙、水蓮、スズラン、スミレ、石竹(せきちく)、ゼラニウム、立葵、ダリア、チューリップ、ツツジ、椿、ツルニチ草、デージー(→ひな菊)、天人花(てんにんか→桃金嬢ミルト)、燈心草(とうしんぐさ)、撫子(なでしこ)、においあらせいとう、野バラ、薔薇、ひまわり、ヒヤシンス、ベラドンナ、ヘリオトロープ、牡丹、マーガレット、マツムシソウ、マヨラナ、マロニエ、迷迭香(まんねんろう→ローズマリー)、ミモザ、木蓮、桃、矢車菊、百合、ラヴェンダー、リラ、りんどう

文学作品に登場する花々ですが、当然私が歌曲やオペラアリアを歌う中で気になっている花や、詩にまつわる話が出てきます。

例えば、フォーレ歌曲や、ドビュッシー歌曲では、ヴェルレーヌの詩がよく使われている(・・・・というかヴェルレーヌの詩に彼らが曲をつけた、というほうが正しいですね。)のですが、「Ⅴ近代の花」の章の中の<印象主義の花>のところで、彼の『グリーン』『憂愁(スプリーン)』という詩に関連して興味深い記述があります。(フォーレもドビュッシーも歌曲にしています。) マネやモネなど印象派の画家による絵画の中で使われる絵の具に関しての記述です。 モネの代表作「庭の女たち」をゾラ(美術批評家)が《・・・ゼラニウムのあざやかな赤と矢車菊の艶消しの白が強いアクセントになっている。》と評しているらしいのですが、印象派のこの時代は新しい有機顔料による絵の具がたくさん登場したそうなのです。 天然の顔料よりずっとあざやかな”イギリス赤”と呼ばれた酸化鉄、”プルシアンブルー”と呼ばれたコバルト青、もっとも多くの種類が開発されたグリーン、「現代の鉛白」である亜鉛華(ジンクホワイト)←ゾラが言う《艶消しの白》・・・・など。 夜のガス燈に照らされた葉叢の美しい緑の表現(ある専門家によると、その葉の緑は互いの波長の関係で特に美しく映えるらしいです。)、ビロードのような闇を表現することが可能になったのは緑系統の有機顔料のおかげだったそうです。 ヴェルレーヌの『グリーン』は「水彩画」という詩篇におさめられていますが(フランス語の詩ですが英語の表題)、作者の山中哲夫は《この水彩絵具の色調も印象派のものだ。》と述べています。 そして彼の『憂愁(スプリーン)』にも、《印象派の絵具が感じられる。》と。


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Cecilia

みどさん、niceありがとうございます!
イタリア古典を歌っても、オペラでも近代歌曲でも花はつきものですね。
by Cecilia (2006-04-13 08:46) 

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