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キリスト教文学としての「ハイジ」 [読書]

昨日は「ハイジ」の映画を見てきました。

実写版ということでどんな感じかな、と期待して行きました。

またこの作品はどうしてもアニメのイメージが強いので、いろいろと思うことはありました。

映画の感想としては、どうしても時間が短いので展開が早すぎ、アニメで丹念に描かれた部分と比較してしまうので、その点、物足りなかったです。

いかにもずるそうなデーテおばさん、潤いのないロッテンマイヤー女史でしたね~!

アルムおんじはなかなかいい感じでした。

ハイジはちょっと野性味がほしかったかな?

そうそう猫好きに見逃せないのが、ねこちゃんたちが登場するシーンなのです!!

ハイジがアルプスの山を見たくて塔に登る場面があるのですが、そこでねこちゃんたちをもらってくるのですね。

そして猫嫌いのロッテンマイヤーさんが卒倒してしまうのですが・・・。

映画のハイジはアルプスに一匹連れ帰っていましたね。

私としては是非とも字幕で観たかったのですが、吹き替え版しか上映されていませんでした。

私はアニメに親しんだ世代ですが、アニメ作品を愛しているとはいえ、思うことは多いです。

これは日本の子供向けに作成されたアニメなので、仕方がないのですが、物語の核心を排除した話に変えられている、というのが問題点だと思います。

私は原作を読み、この作品はキリスト教文学であるという確信を得ました。

作者のヨハンナ・シュピリは牧師の娘であります。

私がクリスチャンだから強調したいというわけではないですが、どのように解釈してもこの作品はキリスト教文学であり、最も強く述べたいのは聖書の中の「放蕩息子」のたとえであります。

ハイジはクララの家でおばあさまに文字を教えてもらうのですが、おばあさまはハイジに「祈ること」について教えます。

また山に帰ったハイジがペーターのおばあさんに読んで聞かせるのは讃美歌です。

そしてハイジが愛するアルムおんじに読んで聞かせるのが聖書の「放蕩息子」の話。

アニメにも映画にも出てきませんが、ハイジにこの話を聞かされたアルムおんじは、

「おとうさん、ぼくはわるいことをしました。天の神様にも、おとうさんにも。ぼくはもうあなたの息子とはいえません!」

と悔い改めの涙を流すのです。

そしてアルムおんじはハイジを連れて、久しぶりに教会に足を運びます。

この部分がこの物語の核心であると思います。

「ハイジ」の話は”神と人の和解”がテーマであり、真の主人公はアルムおんじではないかとさえ思います。

(アルムおんじは賭け事と酒で家屋敷をなくし、殴り合いで人を殺した人間でした。アニメではこういう部分は出てこないし、映画では冒頭からおんじの噂話は出るものの、おんじ自身の口で「誓って人殺しはしていない。」と言います。)

キリスト教文学としての「ハイジ」についてはこちらに詳しく書かれています。
(書いている方も牧師さんのようですが・・・)

※追記:こちらのサイト(「アルプスの少女ハイジ」という物語)全体を見ると、「ハイジ」の原作本、アニメ、出版物、映画、論文、重要資料など多岐にわたって参考になる資料が掲載されています。
記事を書いてからじっくり拝見させていただきましたが、これで「ハイジ」がいかに奥が深いかわかると思います。「ハイジ」への愛情を感じるサイトです。(「最初のページに戻る」をクリックしたら全体がわかります。)

 

 

アニメは本当にキリスト教色がなく、テーマが「山の素晴らしさ」に変わっているように感じます。

私はアニメも原作も好きなのですが、核心部分がない、ということでやはりアニメは原作ほどの深みがないように思います。

又、原作への批判としてはハイジを「良い子」に描きすぎている、というものもあるようですね。

確かにこのような子供像では現代の子供たちからの共感は得られないような気がします。

うちにある原作本はこちらです。

ハイジ (上)

ハイジ (上)

  • 作者: ヨハンナ・シュピリ, 上田 真而子
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2003/04
  • メディア: 単行本

ハイジ (下)

ハイジ (下)

  • 作者: ヨハンナ・シュピリ, 上田 真而子
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2003/04
  • メディア: 単行本

 

 

福音館のほうも欲しいです。

ハイジ〈上〉

ハイジ〈上〉

  • 作者: パウル ハイ, J. シュピーリ
  • 出版社/メーカー: 福音館書店
  • 発売日: 2003/03
  • メディア: 単行本

ハイジ〈下〉

ハイジ〈下〉

  • 作者: パウル ハイ, J. シュピーリ
  • 出版社/メーカー: 福音館書店
  • 発売日: 2003/03
  • メディア: 単行本

アニメのサイトもあるようですね。

 


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コメント 24

nyankome

なるほど、奥が深いものですね。
映画は、特に原作がある場合、短い時間に詰めこむためにカットされている部分が多かったりして、消化不良気味のものが気になります。
私はアニメしか知らないのですが、原作も読んでみたいですね。
by nyankome (2006-08-20 09:43) 

Cecilia

nyankomeさん、nice&コメントありがとうございます!
コメントをいただき思い出しました!!
アニメにもあったと思いますが、この作品ではねこちゃんたちが登場するのです!!
映画でもたくさんのかわいいねこちゃんたちが登場していました。
私の大好きな日本猫に近く、可愛らしかったです。
(記事にも追記しておきます。)
以前お正月番組でスイスかどこかで制作されたドラマ版「ハイジ」を見ました。
今回の映画と似たような雰囲気でしたが、あちらのほうが時間がかかっているので、山の生活、フランクフルトの生活が充分に描かれていたと思います。(一回2~3時間で3回ありました。三が日の間放送されました。)
by Cecilia (2006-08-20 10:05) 

のの

ご覧になったのですね。
私も観たいと思っているのですが、行かれるかどうか…。

シュピーリは牧師、しかも確か改革派の牧師の娘だったような…
改革長老派の牧師夫人であったモンゴメリとかぶるところがあります。
ロッテンマイヤーさんとマリラ、似てませんか?

私は慶應のドイツ文学の先生(この先生もクリスチャンです)から
「ハイジはドイツ文学の典型である、修養小説です」と伺いました。
確かに野生児ハイジの成長振りも物語の柱ではありますね。
が、Ceciliaさんがおっしゃるとおり、アルムおんじが教会へ行く場面、
ここはアニメでも非常に印象に残っています。
ここが核心であるとの見方は、非常に納得できます。

ところで…今週金曜日がCSの夏期学校ですが、今年のテーマは
「放蕩息子」、教師たちが紙芝居をやります。
ふたつの紙芝居を使いますが、私は片方は兄、片方は弟を演じます。
by のの (2006-08-20 18:17) 

violin-123

映画のハイジは観てませんが、Cecilia様がコメントに書かれているドラマ版は見たことかあります。確かにフランクフルトでの生活が詳しく描かれていた様な気がします。
ぼーっとアニメやドラマを見ていたのでキリスト教が根底にあるとは考えもしなかったです。なるほど~。
by violin-123 (2006-08-20 18:55) 

una

見に行かれたのですね
私も時間が取れたら見に行きたいと思ってます
放蕩息子の話は耳に痛いデス・・・今も放蕩者としては(汗)

キリスト教に改宗しなくても
キリスト教の教える良い教義やいいことろは
文学や映画を通していろんな宗教感を持つ人たちに
伝わっていけばいいですね
by una (2006-08-20 19:13) 

トスカ

その映画は私が観てしまったとんでもない映画の裏で上映していました。「ハイジ」を観ていればほのぼのした気持ちになっていたんでしょうね。
アニメのハイジでは、おんじの過去は村人の噂話として、昔人を殺したことがある、と語られます。そんなおんじの罪の意識は、Ceciliaさんの書かれている懺悔の気持ちではなく、アニメではいつの間にか氷解するように無くなってしまいます。そういったところ、本当に日本的だと思います。
by トスカ (2006-08-20 20:53) 

c-tail

ハイジは子どものころにアニメをちょっと見た程度で、原作は読んだことがありません。そこまで背景のある話だったとは、初めて知りました。
今度、原作も読んでみたいです。
映画で可愛らしい猫が出ていたのはラッキーですね。海外の映画、ドラマだとどうしても洋猫系が多いものですが、日本猫に近いというのはポイントが高いです。
by c-tail (2006-08-20 21:39) 

tshp

Cecilia様 リンクありがとうございます。
映画の感想、納得しながら読ませていただきました。
全般的に実写映画のハイジとして最もよい作品だったと私は感じました。
日本のアニメからは宗教色がだいぶん薄れていますが、今回の実写映画も薄いですよね。
日本のアニメの宗教色はハイジの詩の朗読ぐらいですが、ドイツでの吹き替えはこれもなくなって、ハイジはおばあさんに「お話」を読んであげることになってます。
やはり現代では、洋の東西を問わず、扱いにくい側面なのでしょう。
でもこれが抜け落ちると作品の生い立ちそのものがわからなくなりますし、また抜け落ちていく現代という時代を逆に把握することもできます。

これからもどうかよろしくお願いいたします。
by tshp (2006-08-20 23:26) 

Cecilia

ののさん、nice&コメントありがとうございます!
私も調べないとわかりませんが、改革派だったような気はします。
それとロッテンマイヤーさんとかぶるのはリンド夫人では??
アニメにもキリスト教色が全くないわけではないのですが、悔い改めの場面が完全になくなっていました。原作を読むまではこんなもの・・・と思っていましたが、読んでみたら最も大事な部分なので、思うことが多いですね。
「神との和解」なしに「人との和解」のみが描かれているように思います。
ののさんならおわかりでしょうけれど、「神との和解」「人との和解」は切り離せない関係ですよね。

夏期学校、今年は宿泊なしなのですね。
by Cecilia (2006-08-21 00:21) 

Cecilia

バヨリにすとさん、nice&コメントありがとうございます!
記事で載せたtshpさんのHPを見たらあれは映画だったのかな・・・と気になってきました。
確か10年近く前に放送されたと思います。
私も原作を読むまでは、「都会は悪」「山は善」くらいにしか考えていませんでしたし、ハイジ中心で読んでいました。
by Cecilia (2006-08-21 00:27) 

Cecilia

unaさん、コメントありがとうございます!
う・・・私も放蕩娘なので、心が痛みます・・・。
昔はキリスト教でない宗教のことを考えたりもしませんでしたが、他宗教のよさも見えてきたような気がします。
素晴らしい音楽や絵画などを通して、多くの方が癒され、救いを感じることができたら・・・と思います。
by Cecilia (2006-08-21 00:32) 

Cecilia

トスカさん、nice&コメントありがとうございます!
その映画のHP見ましたよ~!!
確かに独特な雰囲気でしたね!!
「罪の意識」・・・ですが、キリスト教では「罪」とは神との関係が断ち切られている状態、神に背を向けて歩んでいる状態を指しています。ここでアルムおんじが涙を流して悔い改めるのも、「神のもとに立ち返る」という感覚でしょうね。もちろん過去に犯したいわゆる「罪」を悔いている面はあると思います。
「罪人の赦し」というのも日本人に理解しにくい部分ではないかと思います。
 
by Cecilia (2006-08-21 00:57) 

Cecilia

c-tailさん、nice&コメントありがとうございます!
c-tailさんたちは再放送をご覧になったのでしょうね。
放送されていた時、私は小学一年生でした。
このシリーズに育てられた、と言っても過言ではありません。
記事に映画のHPのリンクも貼り付けましたが、その中の「壁紙」にねこちゃんがいましたよ!
ロッテンマイヤーさんに飛びつく子ねこちゃんたち・・・この前明治村で子ねこちゃんに絡まれた経験から、その時の状況がいかに大変か、実感しました。
by Cecilia (2006-08-21 01:02) 

Cecilia

tshpさん、コメントありがとうございます!
お越しいただいてうれしいです。
そちらのHPは本当に得がたい情報が満載で素晴らしいですね!!
高畑アニメのハイジがいかに欧米などでも評価されているか知り、驚きました!
キリスト教色がないにせよ、原作とは別の価値を持っていると感じます。
そちらのHPでの扱いにも納得です。
本当に勉強になりました。
サイドバーのほうにあらためてリンクを貼らせていただきます。
by Cecilia (2006-08-21 01:08) 

タマンサ

子供の頃、日曜日夜7:30がすごく待ち遠しかった一人でした。つい最近「トリビアの泉」で「アルムおんじは過去に人を殺してしまったことがある」というようなトリビアが出て「へぇ」の数もかなり出ました。いずれ原作を1度読んでみようか、と思っていました。
私はクリスチャンではありませんが、「放蕩息子」の話は知っています。最初に聞いたときは納得いかなかったけど、この年齢になって少し理解できるようになりました。
by タマンサ (2006-08-21 08:03) 

Cecilia

タマンサさん、nice&コメントありがとうございます!
私も日曜夜7:30が楽しみでしたよ!!
長女が「トリビア」の話をするので(見てもいないのに!)、その話題はよく出ます。ファミリーマートに行くと、優しそうなアルムおんじの絵が!!・・・でも「アルムおんじは人を殺したんだよね!?」とそういう方向にいってしまうのです。ファミマに行くと、ハイジのキャラの菓子パンなどが食べたくなります。
「放蕩息子」はバレエの題材にもなっていて、先日「マリー・ローランサン美術館」に行った時もルオーの舞台デザインとして展示されていました。(音楽はプロコフィエフ)
クリスチャンでなくても音楽などの芸術を理解するために、聖書やギリシア神話の知識はあるほうが良いですね。
by Cecilia (2006-08-21 11:28) 

ハイジって、そうだったんだ・・・・。と、アニメのハイジに刷り込まれたイメージしかなかった私は愕然としてしまいましたっ。若いころはキリスト教文学(仏の)を学んでいたんですが、ハイジの宗教性なんて考えたことが無かったです。お恥ずかしいやらショックやら・・・。さっそく原作を読むことにします。気づかせてくださって感謝です。
by (2006-08-21 17:26) 

Cecilia

minervaさん、nice&コメントありがとうございます!
フランスのキリスト教文学・・・何でしょう??とっさに浮かばないのですが、カトリック系でしょうね。
私も原作を読んで目から鱗でした。クリスチャンといえども、子供が出来るまで、読む機会もなく、何となくわかった気になっていました。
同じ系統のキリスト教的児童書で「わたしのアンネット」(やはりアニメでやっていた)の原作が気になっています。(「雪の・・・」という話らしいのですが。)こちらのヒロインは「良い子」ではないのです。原作が読みたいです。
by Cecilia (2006-08-21 20:14) 

かあか

本当に深いお話だと思います。私は原作のアルムおんいが教会に足をむけ、神様に寄り添う~くだりが大好きです。ヒトとの関係ではなく自分と神様との関係なんですよね。神はおそらくいつも許してくださっている~そんな気がします。クリスチャンでない私が生意気を書いてすみません。
音楽においても、自分が歌を歌えることにしても、偉大なチカラが働いていることにいつも感謝の思いがあります。チロルの山々を見たとき、ここで生きる過酷さと神からの恩恵を享受する~というようなコトを実感したことがあります。
息子にもぜひ読ませたいと思っています。
by かあか (2006-08-22 10:10) 

Cecilia

かあかさん、nice&コメントありがとうございます!
生意気だなんてとんでもないです。
「ハイジ」の最も核心である部分で思いを共有できたようでうれしいです。
記事の中ではアニメの「ハイジ」にはキリスト教色はない、と書きましたが、全てを癒す「山の素晴らしさ」(←アニメで強調されている部分)は神からの恩恵であると思います。アニメでは直接的ではなくても、「偉大な力」として間接的に「神の存在」を表現しているようにも感じます。
この前霧が峰に行きましたが、自然の素晴らしさに触れさせたい、と心から感じました。
五感を研ぎ澄ます体験をもっとさせてあげたい・・・と思うのですが、なかなか思うようにいきません。
かあかさんご夫婦は息子さんにそのような体験をたくさんさせていらっしゃるようで、素敵だなあ、と思います。
by Cecilia (2006-08-22 10:31) 

サンラブ

こんばんは
ハイジって宗教的な部分もあったのですね。私もアニメしか知りません。宗教的な部分ってどうしても作品として扱い難いですものね。
どうしてもその辺りの表現を緩めて作品を作るしかないですものね。
勉強になりました。
by サンラブ (2006-08-22 20:41) 

Cecilia

サンラブさん、nice&コメントありがとうございます!
アニメ版は本場のスイスやドイツ、スペインなどの西欧諸国やアジアでもかなり親しまれているようです。(上に載せたサイトでわかりました。)
他の映画でも宗教色は前面に出ていませんね。
しかし、同じ名作劇場シリーズでも「わたしのアンネット」はかなりキリスト教色が強く、驚きました。原作が手に入らず読めていないのですが、早く読んで比較したいものです。
又「愛少女・ポリアンナ」もキリスト教色濃い作品ですね。
by Cecilia (2006-08-22 21:26) 

ハイジのおともだち

ハイジ原作の宗教性については、こちらに詳しく書かれていましたよ。
純丘曜彰『ハイジに会いたい!』三修社
http://www.sanshusha.co.jp/np/details.do?goods_id=2728
by ハイジのおともだち (2006-08-23 21:02) 

Cecilia

「ハイジのおともだち」さん、はじめまして。
コメントありがとうございます!
情報を提供していただいてありがとうございます!
この本を読んでみますね。
by Cecilia (2006-08-23 21:22) 

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