ふたりのロッテ [読書]
ちょっと前にeuridiceさんがケストナー原作の映画についての記事を書いていらっしゃいました。
私も「ふたりのロッテ」に関して名作アニメ関連でも書きたいと思っていました。
この話を知ったのは子供の頃にテレビで劇団四季の子供向けミュージカルを見たのがきっかけでした。
四季の同じミュージカルは今から7~8年ほど前にも見ています。(詳しくはこちらをどうぞ)
これで私はこの話のファンになりましたが、二回目に見た頃だったか・・・そう離れていない時期にNHKBS2での再放送でアニメを見たのでした。
このアニメ、何とDVDは出ていないそうです。
以前ビデオが出ていたようですが絶版になっているということです。(くわしくはこちらをどうぞ)
私はBS2で毎日毎日見ていましたが、なかなか良いな~と思って見ていました。
それとその時はまだ原作を読んでいなかったのですが、四季ヴァージョンとはだいぶ違うと思ったのでした。(当然ですが。)
四季の「ふたりのロッテ」はダンスシーン(というよりバレエですね!)も楽しめ、歌も楽しめる・・・という意味で音楽として楽しめますし、オペラのようなものではありますね。
しかしアニメを見たことでウィーン国立歌劇場の常任指揮者で作曲家でもある父親のパルフィー氏、そして歌劇場のシーン、ルイーゼに成り代わったロッテがパルフィー氏にピアノレッスンを受ける場面・・・などこの作品自体の音楽面で非常に興味が出てきました。
・・・ということで原作を是非とも読まなければ・・・と思っていたのですが、なかなかじっくり読む機会がありませんでした。
ここのところ児童文学づいていますが、昨日本棚(娘達用)を整理していたら、すでに購入済だった本を発見しました!
例の予備校の隣のお店で買おうかどうしようか悩みましたが、家にもあったような気がしていたのですね。
もうひとつ「おちゃめなふたご」というやはりアニメ化されている本があって、それがあるのは覚えていたのですが。
娘たちに読ませたくて買ったのですが、おそらくまだ読まれてないことでしょう。(とてもきれいだった!)
昨晩読み始めましたが、もうあっという間に読めてしまいました。
あらためて原作を読んで思ったのは、ケストナーは音楽に造詣が深いのでは・・・ということです。
この話に登場するオペラはフンパーディンクの「ヘンゼルとグレーテル」です。(あちらではポピュラーなはずですが。)
ウィーン国立歌劇場の常任指揮者の華やかな生活ぶり、作曲家としての風変わりな暮らしぶり・・・ここらへんが非常にリアルで面白いです。(そうでないと離婚の原因が語れないのですが)
しかもパルフィー氏は自宅のアトリエで楽譜を書いているだけではなく、自分に好意を持っているオペラ歌手たちに歌のレッスンをつけているのですね。(花形歌手のルーザーに「リゴレット」の稽古をつける・・・とありますね。)
ロッテの夢の中にコロラトゥーラ・ソプラノで歌う鳥が出てきたり・・・とオペラファンならうれしくなる表現があちこちに出てきます。
あと作曲シーンというのも興味深いです。
子供向けオペラの作曲シーンでは・・・
《両手をつかって、いくつか音を出してみる。首をかしげ、音に聞きいる。そのメロディをもう一度、ひいてみる。転調して、くりかえす。今書いているオペラのなかの楽しい子どもの歌の、短調への変奏だ。リズムを変えてみる。・・・(中略)・・・なにしろ、こんなにうつくしい、ハ短調の悲しい歌が書けたのだから。》
《パルフィーさんは、しばらくドアをにらんでいたが、ベーゼンドルファー社のピアノにむかい、書きかけの子供向けオペラの楽譜をぱらぱらとめくって一枚をとりだし、鍵盤の前に腰かける。しばらく、その楽譜をひく。力強く、簡素なカノン、むかしの教会旋法の一種だ。中世のドーリア旋法からハ短調へ。ハ短調から変ホ長調へ。それから、ゆっくり、ほんとうにゆっくりと、もとのメロディをすこし変えながらなぞるなかから、新しいメロディが殻を破ってうまれてくる。単純で、心うばわれるメロディーは、まるでふたりのちいさな女の子が、明るいすきとおる声で歌っているようだ。夏の草原で。青空をうつす、すずしい山の中の湖のほとりで。その空は、どんな分別よりも高い。その太陽は、ものみなすべてをあたためる。いい人も、悪い人も、どっちつかずの人も、わけへだてなく。》
・・・というような表現がされていて、この二つから見ると、単にオペラに親しんでいる以上に音楽への造詣の深さが窺い知れると思いませんか?
パルフィー氏はロッテとルイーゼの誕生日に「ふたごの誕生日行進曲」を作曲しピアノで弾いて聴かせますし、最後の場面ではグランドピアノで自作の子供向けオペラの変ホ長調二重唱を妻(離婚していたけれど再婚するのですね。)に弾いてみせるのですね。
調にこだわった表現が多いように思いますね。
ピアノもベーゼンドルファー社の・・・とあるのが興味深いです。
音楽に興味のない人や知識のない子どもが読んでも何となく読んでしまいそうなところですが、音楽好きには見過ごせない表現ですよね!
・・・ということで音楽面でこんなにいろいろ出てくるとは・・・ということで驚いています。
ただアニメではロッテがものすごくピアノが上達していたはずですが、原作ではさほどではないですね。
でも基本的にアニメは原作どおりだと思います。
ところでこのパルフィー氏に近寄ってくる女性(イレーネ・ゲルラッハさん)、私は「トラップ一家物語」(「サウンド・オブ・ミュージック」の原作のアニメ)のイヴォンヌ姫と重なってしまいます。(再婚の候補者で美人で堂々としている!ウィーン絡みというところも!)
ケストナーは第二次世界大戦中、自由な執筆活動を制限されている中で「ふたりのロッテ」を書き上げいていたそうです。(発表は戦後)
《休暇施設は、子どもたちのしあわせと楽しさがいっぱいつまった蜂の巣だ。そういう施設はたくさんあるけれど、いくらあっても足りることはない。》
こんな表現にケストナーの実感を感じてしまいますね。
訳者である池田香代子さんの後書きも興味深いです。
《ケストナーは、子どものつらさを子どもに代わって言い表してくれます。そう、子どものため息を作品にしっかりきざみつけてくれているのです。同時にケストナーは、多くはおとなのために子どもがつらい目にあうことは、子どもだから仕方のないことでもなんでもない、と言ってくれます。子どもは怒っていいのだ、とすら。そして、頭をしゃんともたげてつらいことに向き合う子どもたちを、ケストナーは心から尊敬しています。》
私も「ふたりのロッテ」に関して名作アニメ関連でも書きたいと思っていました。
この話を知ったのは子供の頃にテレビで劇団四季の子供向けミュージカルを見たのがきっかけでした。
四季の同じミュージカルは今から7~8年ほど前にも見ています。(詳しくはこちらをどうぞ)
これで私はこの話のファンになりましたが、二回目に見た頃だったか・・・そう離れていない時期にNHKBS2での再放送でアニメを見たのでした。
このアニメ、何とDVDは出ていないそうです。
以前ビデオが出ていたようですが絶版になっているということです。(くわしくはこちらをどうぞ)
私はBS2で毎日毎日見ていましたが、なかなか良いな~と思って見ていました。
それとその時はまだ原作を読んでいなかったのですが、四季ヴァージョンとはだいぶ違うと思ったのでした。(当然ですが。)
四季の「ふたりのロッテ」はダンスシーン(というよりバレエですね!)も楽しめ、歌も楽しめる・・・という意味で音楽として楽しめますし、オペラのようなものではありますね。
しかしアニメを見たことでウィーン国立歌劇場の常任指揮者で作曲家でもある父親のパルフィー氏、そして歌劇場のシーン、ルイーゼに成り代わったロッテがパルフィー氏にピアノレッスンを受ける場面・・・などこの作品自体の音楽面で非常に興味が出てきました。
・・・ということで原作を是非とも読まなければ・・・と思っていたのですが、なかなかじっくり読む機会がありませんでした。
ここのところ児童文学づいていますが、昨日本棚(娘達用)を整理していたら、すでに購入済だった本を発見しました!
例の予備校の隣のお店で買おうかどうしようか悩みましたが、家にもあったような気がしていたのですね。
もうひとつ「おちゃめなふたご」というやはりアニメ化されている本があって、それがあるのは覚えていたのですが。
娘たちに読ませたくて買ったのですが、おそらくまだ読まれてないことでしょう。(とてもきれいだった!)
昨晩読み始めましたが、もうあっという間に読めてしまいました。
あらためて原作を読んで思ったのは、ケストナーは音楽に造詣が深いのでは・・・ということです。
この話に登場するオペラはフンパーディンクの「ヘンゼルとグレーテル」です。(あちらではポピュラーなはずですが。)
ウィーン国立歌劇場の常任指揮者の華やかな生活ぶり、作曲家としての風変わりな暮らしぶり・・・ここらへんが非常にリアルで面白いです。(そうでないと離婚の原因が語れないのですが)
しかもパルフィー氏は自宅のアトリエで楽譜を書いているだけではなく、自分に好意を持っているオペラ歌手たちに歌のレッスンをつけているのですね。(花形歌手のルーザーに「リゴレット」の稽古をつける・・・とありますね。)
ロッテの夢の中にコロラトゥーラ・ソプラノで歌う鳥が出てきたり・・・とオペラファンならうれしくなる表現があちこちに出てきます。
あと作曲シーンというのも興味深いです。
子供向けオペラの作曲シーンでは・・・
《両手をつかって、いくつか音を出してみる。首をかしげ、音に聞きいる。そのメロディをもう一度、ひいてみる。転調して、くりかえす。今書いているオペラのなかの楽しい子どもの歌の、短調への変奏だ。リズムを変えてみる。・・・(中略)・・・なにしろ、こんなにうつくしい、ハ短調の悲しい歌が書けたのだから。》
《パルフィーさんは、しばらくドアをにらんでいたが、ベーゼンドルファー社のピアノにむかい、書きかけの子供向けオペラの楽譜をぱらぱらとめくって一枚をとりだし、鍵盤の前に腰かける。しばらく、その楽譜をひく。力強く、簡素なカノン、むかしの教会旋法の一種だ。中世のドーリア旋法からハ短調へ。ハ短調から変ホ長調へ。それから、ゆっくり、ほんとうにゆっくりと、もとのメロディをすこし変えながらなぞるなかから、新しいメロディが殻を破ってうまれてくる。単純で、心うばわれるメロディーは、まるでふたりのちいさな女の子が、明るいすきとおる声で歌っているようだ。夏の草原で。青空をうつす、すずしい山の中の湖のほとりで。その空は、どんな分別よりも高い。その太陽は、ものみなすべてをあたためる。いい人も、悪い人も、どっちつかずの人も、わけへだてなく。》
・・・というような表現がされていて、この二つから見ると、単にオペラに親しんでいる以上に音楽への造詣の深さが窺い知れると思いませんか?
パルフィー氏はロッテとルイーゼの誕生日に「ふたごの誕生日行進曲」を作曲しピアノで弾いて聴かせますし、最後の場面ではグランドピアノで自作の子供向けオペラの変ホ長調二重唱を妻(離婚していたけれど再婚するのですね。)に弾いてみせるのですね。
調にこだわった表現が多いように思いますね。
ピアノもベーゼンドルファー社の・・・とあるのが興味深いです。
音楽に興味のない人や知識のない子どもが読んでも何となく読んでしまいそうなところですが、音楽好きには見過ごせない表現ですよね!
・・・ということで音楽面でこんなにいろいろ出てくるとは・・・ということで驚いています。
ただアニメではロッテがものすごくピアノが上達していたはずですが、原作ではさほどではないですね。
でも基本的にアニメは原作どおりだと思います。
ところでこのパルフィー氏に近寄ってくる女性(イレーネ・ゲルラッハさん)、私は「トラップ一家物語」(「サウンド・オブ・ミュージック」の原作のアニメ)のイヴォンヌ姫と重なってしまいます。(再婚の候補者で美人で堂々としている!ウィーン絡みというところも!)
ケストナーは第二次世界大戦中、自由な執筆活動を制限されている中で「ふたりのロッテ」を書き上げいていたそうです。(発表は戦後)
《休暇施設は、子どもたちのしあわせと楽しさがいっぱいつまった蜂の巣だ。そういう施設はたくさんあるけれど、いくらあっても足りることはない。》
こんな表現にケストナーの実感を感じてしまいますね。
訳者である池田香代子さんの後書きも興味深いです。
《ケストナーは、子どものつらさを子どもに代わって言い表してくれます。そう、子どものため息を作品にしっかりきざみつけてくれているのです。同時にケストナーは、多くはおとなのために子どもがつらい目にあうことは、子どもだから仕方のないことでもなんでもない、と言ってくれます。子どもは怒っていいのだ、とすら。そして、頭をしゃんともたげてつらいことに向き合う子どもたちを、ケストナーは心から尊敬しています。》
2008-03-27 09:55
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ああ、これ、このお話は子どもの頃すごく好きでした!!
ケストナーつながりで、「点子ちゃんとアントン」も読みました。しかし、今手元にないので(多分実家にあるはず)読み返せないのが残念です。
言われてみれば、「トラップ一家物語」(サウンド・オブ・ミュージック。夫が大好きなんです)のイヴォンヌさんを誰かに似ているな~とずっと思っていたのですが、イレーネさんと立場が似てますね。子どもの頃「ゲルラッハなんてヘンな苗字だな~」と思っていました。
by ことなりままっち (2008-03-27 17:23)
Ceciliaさん
リンク、どうも・・です。記事を読んで、ほんとに細かいところは全然覚えていないというか、読み飛ばしていたようです。もう一度読みたくなりました。
映画のお父さんに比べると社会的地位がずいぶん高いですね^^;
ウィーン国立歌劇場の常任指揮者とか、音楽もオペラでは、現代の観客の共感をよびにくいと考えられたのでしょうか。
by euridice (2008-03-27 18:12)
私も、同じく子どもの頃NHKで何度か見たのですが、話の中身はまるで覚えていませんでした。ただ、お菓子会社の名前が女の子の名前だと知ったのは、このおかげでした。それで、『お口の恋人、ロッテ』なのか!と納得したものでした。
昨年末、ディズニーchで『ファミリーゲーム』を見ていたら、キムボールさんにこれって要するに『二人はロッテだ』と言われて、びっくりしました。最近、その古いタイプの映画『罠にはまったパパとママ』ってのも放映されました。これは60年代のものです。やっぱ2000年の作品の『ファミリー』の方が斬新だし、子役がかわいかったです。
by 降龍十八掌 (2008-03-27 23:28)
『点子ちゃんとアントン』ですが、私も大分前に映画チャネルでたまたま見ました。とてもすばらしかったです。その後、キムボールさんがアマゾンで買った原作を見ましたが、まるで映画とは違う話でした。
映画は現代に置き換えているので、かなり脚色していました。
これもケストナーのことは(全く知りませんでしたが)ですから、ケストナーつながりとはびっくりです。
だいたい、映画ではなんで点子(パンチェンとか発音していました)なのかわからなかったです。ドイツは全く知らないもんで・・・
by 降龍十八掌 (2008-03-27 23:33)
ウィーンと言えば、ベーゼンドルファーですよね。
ところで、ベーゼンドルファー社はベーゼンドルファーのピアノの音をきちんと再生するためにスピーカーまで開発しています。徹底していますね。
http://www.noahcorporation.com/bosen/index.html
恐ろしい値段が付いていますが。
http://www.phileweb.com/news/audio/200404/01/5083.html
by nyankome (2008-03-28 02:05)
Krauseさん、niceありがとうございます!
by Cecilia (2008-03-28 06:51)
ことなりままっちさん、コメントありがとうございます!
「点子ちゃんとアントン」は家にあった世界名作文学のドイツ編に入っていました。(床屋の場面が印象的でした。)
「トラップ一家物語」と「わたしとわたし~ふたりのロッテ」をBS2で見た時期も結構近かった記憶があります。
似てますよね~、このふたり!
by Cecilia (2008-03-28 06:55)
euridiceさん、コメントありがとうございます!
映画のお父さんは作詞家でしたっけ?
生活ぶりが庶民っぽいですよね?
映画も観てみたいです。
後書きによると、ロッテとお母さんが住むミュンヘンは昔から出版の中心だったようですね。(お母さんは出版業)
かなり立派な両親・・・という設定ですね。
by Cecilia (2008-03-28 07:14)
降龍十八掌さん、nice&コメントありがとうございます!
「ファミリーゲーム」は見たことないです。
「ふたりのロッテ」と内容的に重なるのでしょうか?
ディズニーの昔の映画・・・といえば、この前「ポリアンナ」で書いた私の記憶にあるディズニー映画の「ポリアンナ」の絵本を映画で見たいと思っていましたがDVDなどが手に入りにくい状況であきらめるしかないと思っていたらYouTubeで少しだけ見ることができました。(Pollyannaで検索)
「チキチキバンバン」みたいな雰囲気の映画になっていました。
「点子ちゃんとアントン」も原作をもう少し読んだ上で映画を見たいです。
何でも現代に置き換える風潮があるのですね。
点子って確かに不思議ですよね!(笑)
by Cecilia (2008-03-28 07:24)
nyankomeさん、nice&コメントありがとうございます!
さすがベーゼンですね~。
私には縁がないですが・・・。
ケストナーもわざわざベーゼンドルファーと書くのには理由があったのだと思います。
ウィーン国立歌劇場の常任指揮者ともなれば当然ベーゼンなのでしょうね。
by Cecilia (2008-03-28 07:36)
アートフル ドジャーさん、niceありがとうございます!
by Cecilia (2008-03-28 14:38)
xml_xslさん、niceありがとうございます!
by Cecilia (2008-03-28 22:41)