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愛の妖精 [読書]

ここのところロマン派の音楽周辺のことを取り上げているのですが、妖精が出てくるバレエを取り上げたところでやっとこの話題ができます。
今までも機会があれば取り上げたかったのですが、ジョルジュ・サンドの「愛の妖精」です。

ジョルジュ・サンドはショパンの恋人(しっくりこないですね~。愛人?)で、「愛の妖精」はショパンがお好きな方は当然ご存知ですよね?

ショパン好きでなくてもある程度古典文学やクラシック音楽に親しんでおられる方々なら名前くらいはご存知かもしれません。

私は小学生の頃から(もちろん易しくなったもので)親しんでいました。(ほぼ完訳版だったと思いますが。)

それ以降も文庫本などで時々読んでいましたが、手元にない時期が続き、再び手に入れたのは3年ほど前夫の実家ででした。(夫が大学時代に読んだものだそうですが。)

今はない旺文社文庫で、訳・解説はあの篠沢秀夫教授です!


愛の妖精 (岩波文庫)

愛の妖精 (岩波文庫)

  • 作者: ジョルジュ サンド
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1959/01
  • メディア: 文庫




愛の妖精 (中公文庫)

愛の妖精 (中公文庫)

  • 作者: ジョルジュ サンド
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2005/06
  • メディア: 文庫



この中公文庫のほうは篠沢秀夫訳なので旺文社文庫と同じ訳だと思います。


繰り返し何度も読んだ作品ですが、いまだにサンドがこれで何を言いたかったのかよくわかりません。

確かに愛読していましたが、テーマを考えながら読んでいたわけではなく、”こおろぎ”ことファデットに自分を重ね(いじめられていたので共感できた!)、爽やかな青年ランドリとの恋愛、女性としての成長の過程に心躍らせていた・・・というところです。

大人になってからはファデットがあまりにもできすぎているのが気になっていました。

そもそもサンドってとても”飛んだ”女性だったのに、ファデットの信仰深さ、慎み深さを描いている件はこの作家が描きたかったことなのだろうか・・・と気になってしまったわけです。
幼い頃は単純に「ファデットは内面が素晴らしかったんだなあ。」くらいにしか思っていませんでした。
思えば愛を告白される前後くらいが一番面白い感じがします。(もちろん最後まで魅力的な人物ですが。)

それからランドリ。
全く影がなくておもしろくない!!
昔、私は「大草原の小さな家」シリーズの「農場の少年」アルマンゾのファンでした。(その頃は小説を読んでなかったのでテレビドラマのアルマンゾです。)
爽やかな好青年が好きだったのですね。
今読んでみると欠点のない快活な少年(青年)ということで小説の題材としては書くところがないのでは・・・という人物です。

この小説の真の主人公は双子の弟ランドリに異常なほどの愛情を持つシルヴィネなのでは・・・という気がしています。
そしてこの小説の核心は田園を舞台とした爽やかな恋愛(確かに最初はファデットは爽やかではありませんでしたが。)などではなく、この双子兄弟の異常なまでの繫がり、愛情なのでは・・・と最近思っています。

こういうことを書くとすぐに”同性愛”に結び付けられそうですが、そういう部分もあるとは思いますが、こういう感情は双子だけでなく年の近い兄弟(姉妹)にはよくあることではないでしょうか?

幼い頃から双子同然に育ったわが娘達を見ていると、この小説でのいろいろがす~っと理解できるような気がします。

昔はシルヴィネの嫉妬心ってまったく理解できませんでした。
私にも姉や弟がいましたが密着度がなかったので、それぞれが他の友達と親しくしていても何も感じませんでした。
(姉は3つ年上、弟は5つ年下。)
うちの娘達は本当に仲良く育ち、親にとっては好都合なことが多かったです。
ただ、ここにきてやはり仲は良いのですが、お互いに嫉妬心とかすごいです。
それぞれに恋人ができたら本当にどうしよう~と言う感じですね。
今それぞれがいろいろと抱えているというのもあるのですが、このことを良い関係に発展させていくにはどうしたらよいのでしょうか?
とにかくどちらかが他の友達などと長いことメールなどをしているとお互いに落ち着かないのですね。
二人とも親離れはしていると思うのですが、姉妹離れできるかどうかが重要です。

まあ、これは置いておいて、この双子の出産の時、産婆のおばあさんが「赤ちゃんの時からそれぞれ別々なことをさせるように」という忠告をするのですが、時が経つにつれ、皆そんなことを気にしなくなっていった・・・ということが書かれてありました。
この産婆の言葉は格言のように思えたりしますね。

それからこの小説には”鬼火”の場面があります。
”鬼火”というピアノ曲(リストでしたね?)もありますが、この鬼火は「ジゼル」にも出てくるもので、そのためにロマン派のキーワードではないかと思ったわけです。

そうそう・・・この作品は「ジゼル」の約10年後の作品ですね。

音楽との関連で言えば、以前も書きましたがブーレ(ブレ)が出てくるので昔からどんな音楽・踊りなのだろう・・・ととても気になっていました。
ファデットは大変な名手なのですね。

それから少女趣味な私は題名に惹かれて読んでいたところがあるのですが、原題は「ラ・プチット・ファデット」(小さなファデット)だそうです。
要するに妖精じゃないのですが(「愛の妖精」だと親切な妖精のお話みたいですよね。)

ファデットというのは作品のなかでも説明されているようにいたずらな小鬼、鬼火というニュアンスがあります。
ゴブリン?スカルボ?

・・・ウィリーとかシルフィードと似てなくもないですが、”妖精”から想像する美しいものとはちょっと違うかな?
(私は妖精には良いイメージしかありませんでしたが。)


結局、シルヴィネは弟の妻であるファデットを愛してしまうわけですよね。
身を引くために軍隊に入るのですが。
シルヴィネに対して施している心理療法みたいなものも、あの時代にこういうことを書いたというのも画期的な気がしますが・・・・結局ファデットも療法中にランドリに対するのと同じくらいの愛をシルヴィネに感じてしまったのかもしれません。

その辺の二人の心の動き・・・文章が簡潔なだけに気になるところです。


それからこの小説に対する批判もいろいろあるのでしょうけれど、麻打ち男から聴いた話を小説化した・・・ということのようですね。(序文にある。)











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コメント 16

降龍十八掌

はずかしながら、ジョルジュサンドって男だと思っていました。榊原郁恵かなにかの歌の歌詞にあったので、名前は知っていたのですが。
なんか、サド侯爵のような人を想像していました。
by 降龍十八掌 (2008-06-17 20:17) 

トスカ

>結局、シルヴィネは夫の妻であるファデットを愛してしまうわけですよね。

ええと、頭が混乱しているのは私だけ???
by トスカ (2008-06-17 20:58) 

Cecilia

袋田の住職さん、niceありがとうございます!
by Cecilia (2008-06-17 21:23) 

Cecilia

降龍十八掌さん、nice&コメントありがとうございます!
榊原郁恵の歌でそういうのがあるのですか!
知りませんでした。
サド侯爵・・・何となくわかるような気が・・・。
もちろんジョルジュ・サンドはペンネームで本名はオロール・デュパンですね。
by Cecilia (2008-06-17 21:27) 

Cecilia

トスカさん、nice&コメントありがとうございます!
朝慌てて書いていたのでうっかりしていました。
訂正しておきましたが、”弟の妻”ですね。
朝は眠すぎてミスタイプも多かったんです。
(前日早く目が覚めたせいですね。)
by Cecilia (2008-06-17 21:32) 

Cecilia

xml_xslさん、niceありがとうございます!
by Cecilia (2008-06-17 21:33) 

nyankome

ショパンとジョルジュ・サンドのことも、彼女が小説家だったことも、飛んでる女性だったことも知っていますが、小説は読んだことがないです。
仲のよい姉妹にも悩みがsるのですね。
by nyankome (2008-06-17 21:36) 

Cecilia

nyankomeさん、nice&コメントありがとうございます!
そうなんです。
”二人だけの世界”があるのですが、他人が入る余地がない・・・という感じですね。
いい加減に息苦しくなってきているのでは・・・と思うのですが・・・。
by Cecilia (2008-06-18 06:30) 

ことなりままっち

サンドのこの作品、題名だけは知っていたのですが、まだ読んだことがありません。

ということで「妖精の話」(は、よーせー、というオヤジギャグを夫が言っている)
私が今も付き合いのある高校時代の友人と、高校の頃図書委員をやっていました。それとは別に、図書館のヌシみたいになっていたことがありました。(部活と図書館がなかったら不登校になっていたかもしれず)
その図書館チーム数名で、卒業するとき寄贈した本が「妖精の本」。それを下見に行ったとき初めて、妖精はフェアリーだけではないということを知りました。ノームとか、ゴブリンとか、いわゆる醜悪な外見のものなどもいるということを。

スカルボはラヴェルの「夜のガスパール」ですね。初めて聴いたときすごく怖かった。

うちは年が離れているので、あまりクロスすることがないというか、クロスしようがないのです。中学生と幼稚園児じゃねぇ。幼稚園児がORANGE RANGEとか、スガシカオとか歌ってるのはどうかと思いますが。(ネタ元わかります?キーワードはCLAMPです。お嬢さんたちに聞いてみたら分かるかも)
by ことなりままっち (2008-06-18 10:46) 

Cecilia

ことなりままっちさん、コメントありがとうございます!
「妖精の本」って図鑑みたいな本でしたっけ?
そういう本を欲しいなあ・・・とよく思っています。
気になっているのは小さい子がよくピアノのレッスンなどで弾くバースの「鬼の行進」。
「小人の行進」と言う言い方もあって、だいぶイメージが変わってしまいますよね!
同じ題名でグリーグの曲もあることを知りましたが、こちらの小人は”トロル”なんですよね!(北欧っぽい)
バースがどこの国の人か知りませんが、「トロルの行進」になっている楽譜もあるようです。
”ゴブリン”とは別物なのかな?
私は別物だと思っていたのですが。
「夜のガスパール」もじっくり聴いてみたいです。

確かに幼稚園と中学生では姪と叔母の関係に近いですよね。
ORANGE RANGEとスガシカオは知っていますが、ネタ元はわかりません。
聞いてみます!
by Cecilia (2008-06-18 13:38) 

ひと休み

私は、中3の時、親が買いそろえてくれた旺文社文庫で読みました。感動した覚えがあります。本を読んで、受験勉強がおろそかになった・・・ハハハ。
今覚えているのは、・・・病人の額に主人公が一晩中(だったかな?)手と当てているだけで、熱が下がり・・・という場面です。
心やさしい人(主人公)が、心から、念じ祈れば、そんなこともあるのかな~と、当時心優しくない自分は、感動したのでした。
ショパンとの関係をしったのは、15年程前で、へ~ってな感じでした。
妖精の意味のなかに、いたずらな鬼火も含まれるのならば・・・(中学生の私が受け取ったような)表面的な純愛ものだけではなく、・・・「愛のいたずら」「愛の鬼火」等、実は奥深くに潜む交錯する男女の愛も描いていた?!のかな・・・??
by ひと休み (2008-06-18 13:40) 

Cecilia

ひと休みさん、コメントありがとうございます!
受験勉強がおろそかになったとは!
でも私も覚えがあります。
大学受験のときに「アンジェリク」にはまって・・・。(長編なんですよ~。いまだに全部読んでないです。)
手を当てるだけで熱が下がるとは手かざしで病気を治す宗教みたいですね。(どちらにしても一瞬では治らないですが。)
私は当時自分は心優しい純な人間だと自負していました。
人間の醜悪な部分から目を背けていたところもあるのですが。

>表面的な純愛ものだけではなく、・・・「愛のいたずら」「愛の鬼火」等、実は奥深くに潜む交錯する男女の愛も描いていた?!のかな・・・??

そう思います。


by Cecilia (2008-06-18 13:51) 

ひと休み

再びこんにちは。
本棚に「愛の妖精」があったので、解説等ひろい読みしてしまいました。
それによると、この小説は、二月革命等、フランスが動乱(サンドも逮捕の危険があった)の時期に、”あえて、社会の動乱に意識的に背を向けることによって、すさんだ人心をやわらげ、獄中の民主主義運動の同志を慰めるという形で、一種の社会参加の作品なのだ”そうです。・・・つまり、理想の女性像(いい子ちゃんすぎる)でもあり、手で癒すなど、究極の癒し系ということらしいです。
”~”は、篠沢先生の解説です。

=また、双子の兄は弟を愛するあまり、ファデットを憎んでいたが、彼女によって病が治されると、しだいに彼女を愛するようになり、義妹への愛以上のものになってしまう・・彼は、家をでて兵隊になり戦場に行く決心をする・・このこと(決心)は、ファデットと兄だけで話し合い、そして二人とも泣きながら出てくる・・・ただ母親だけが女の本能で二人の不可能な愛に気づいた・・・ファデットの愛は大きくて深くてだれの心もうばわずにはいられなかった。おそらく、サンドの書きたかったのは、合理的な面以上に、この部分だったのだろう。そのために、双子の生い立ち宿命を詳しく書いた・・・今もってファデットが、おとぎ話であり理想の女の像なのは、知・情・意をバランスよくかねそなえるというのは、女にとって、なかなかむずかしいからだ。
サンドにとっても、彼女は理想の女だったと思われる。=
=~=は秦 早穂子さんの文章の抜粋です。



極端に理想的な感動的なわけが、わかったような気がしました。
Ceciliaさんが文章が簡潔なだけに気になるとおっしゃっていたところこそ、サンドが書きたかった(読者によみとってほしかった)ところなのでしょうね。


ちなみに、今手にして書いたのは、中学生のときに買ってもらった旺文社文庫です。

by ひと休み (2008-06-18 16:34) 

Cecilia

ひと休みさん、再コメントありがとうございます!
私の本も旺文社文庫なのでその解説は実は読んでいます。
でも引用したいな・・・と思っていましたので、よかったです。
お手間をおかけしました。
なるほどな~という解説ですよね!
背景がわからなくてももちろん楽しめますが、いろいろな時代背景を知れば違った見方で読めますよね。

by Cecilia (2008-06-19 06:00) 

ひと休み

おはようございます。
昨日は、暇にまかせて、本を読んで、コメント書かせてもらい、勉強になりました。きっかけをつくってもらえてありがとうございました。

しかし、文庫本の文字の小ささに・・・・歳を感じてしまった~。

これからも、よろしく~。
by ひと休み (2008-06-19 10:51) 

Cecilia

ひと休みさん、再コメントありがとうございます!
きっかけができたようで、こちらもうれしいです。
私もなかなか長編が読めないのですが、これくらいならあっという間に読めますよね!
私こそよろしくお願いいたします。
by Cecilia (2008-06-19 11:41) 

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