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「田園交響楽」(1946年) [映画]

ジャン・ドラノワ監督の「田園交響楽」という映画を観ました。
田園交響楽 - goo 映画
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1946年のカンヌ国際映画展で大賞を取った作品のようです。特に予備知識なく観てみました。アンドレ・ジイドの小説を少女時代から何度も読んでいて、ブログに書いたこともあります
いろいろ突っ込みどころ満載なのですが、タイトルの「田園交響楽」にまつわる部分が映画ではまったく描かれていません。小説では主人公の牧師(小説では語り手)が自分が引き取って育てている全盲の美少女ジェルトリュードを音楽会に連れて行くのですが、そこで演奏されるのがベートーヴェンの「田園交響楽」なのですね。全盲の少女が色を音によって理解していこうとする場面です。実の子供たちを音楽会に連れて行ったことがない牧師は帰宅して妻からなじられ、そのやり取りを耳にしたジェルトリュードが涙するという重要な場面ですが、これを入れると長くなるので難しかったのでしょうか。
あと、小説では冬の場面だけということはなかったですが、全体通して雪景色であるのが特徴的でした。ロケをするのに何ヶ月もかけるわけにはいかなかったという事情でもあったのでしょうか。まあストーリーの上では問題がないように思えました。
女主人公のジェルトリュード、もっと少女っぽい人が良かったですね~。ミシェル・モルガンという女優さん、年齢的には適役だとは思いますが、私の今までのイメージが崩れたかも・・・。私が少女時代のイメージを引きずりすぎていたのが悪いのですが。日本人女優で言えば常盤貴子がもっと痩せてきつくなった感じに思えました。
「田園交響楽」を聴きに行く場面はないですけれど、個人的に興味を持ったのはジャック(牧師の息子)がジェルトリュードにパイプオルガンを教えている場面の曲とか、教会で婦人たちが合唱練習する場面で歌わる"Tochter Sion"(ヘンデルの「勇者は帰る」ですね。得賞歌のアレ。)などの讃美歌です。
小説を読む際にはプロテスタントとカトリックという要素も考える必要がありますが、映画ではそういう面はほとんど描かれず、全盲の娘が「牧師を愛していたが、愛していると思ったのは”ジャックの顔をした牧師”であった」こと、禁欲的であるべき牧師が妻子がいながらこの少女を愛してしまい、深みにはまっていくところが特に強く描かれていたように思えます。
字幕なしでよくわからないフランス語だったため、この程度のことしか書けないのが残念です。

そうそう、牧師館の内装とかインテリア、水道などに惹かれました。白黒映画ですが、どんな風にペイントされているのだろうとか考えながら見ていました。ヨーロピアンカントリーに興味がある方が喜びそうな牧師館です。




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Enrique

文学作品ですから,なかなか難しいのですね。音楽に興味持ち出した頃,小林秀雄の「モォツアルト」などとともに読んだ様な気もするのですが,あまり記憶にありません。やはりほとんど理解出来なかったのでしょう。交響曲ではなくて交響楽というのも文学的ですね。
映画は見たことありませんが,やはりバックの調度や音楽に目(耳)が行きますね。
by Enrique (2011-09-18 09:32) 

Cecilia

Enriqueさん、nice&コメントありがとうございます!
「モォツアルト」は昔大学のゼミで発表したことがありますが、いまだに”疾走する悲しみ”は理解できません。それに比べれば「田園交響楽」はわかりやすいと思います。「交響曲」と言わずに「交響楽」と言っていた時期があるのでは??それにしても映画で観てみると、ジェルトリュードが牧師やジャックと抱き合うシーンが官能的すぎて。昔はもっと精神的な恋愛小説だと思っていました。まあ子供だったので想像にも限界があったのですけれど。
by Cecilia (2011-09-18 09:59) 

伊閣蝶

ジイドの田園交響楽、映画の方は確かに原作では重要なポイントが割愛されていて、あれ?という感じでしたね。
何といっても、ベートヴェンの交響曲第6番を使わずに、ジョルジュ・オーリックが音楽を担当した、というところがミソだと思っています。
つまり、観客の先入観をいったん排除したところから、ドラノワは自分の世界を作り出そうと考えたのでしょう。
あるいはそれが当時の観客に受ける方向性だったのかも知れません。
因に、私はまだ未見ですが、山本薩夫監督も戦前に原節子を主演にして、ジイドの田園交響楽を映画化しています。
話によると、こちらの方はより原作にそった作り方をしてあるそうですが。
by 伊閣蝶 (2011-09-18 10:52) 

Cecilia

伊閣蝶さん、nice&コメントありがとうございます!
すでにご覧になっていたのですね。原節子さん主演のほうも気になっています。
そもそも戦前にキリスト教的な作品が日本で映画化されていたというのが驚きですね。

>つまり、観客の先入観をいったん排除したところから、ドラノワは自分の世界を作り出そうと考えたのでしょう。

観客のすべてというかほとんどの人は小説を読んでない可能性が高かったのではとも思います。どうでしょうか?小説が流行していて映画化されたのでしょうか?それにしてもこの小説が発表されて何十年も経ってないのに、ドラノワ監督の「田園交響楽」に先駆けて日本で映画化されていたというのも驚きですね。
by Cecilia (2011-09-18 11:43) 

伊閣蝶

再コメント失礼します。
1938年の日本は、前年に盧溝橋事件を起こして泥沼の日中戦争に突入するなど、暗い時代を迎えつつあったものの、パリ博覧会には参加していましたし、ヘレン・ケラーが来日するなど、文化的にはまだそれほどひどい状況にはなかったのかもしれません。
また、設立されたばかりの東宝映画は、プロデューサーの森岩雄氏がそれまでの映画会社の徒弟制度をフリーにして、ハリウッド並みのプロデューサーシステムを導入するなど、先進的な試みで出発したこともあって、かなり自由な雰囲気でもあったようです。
それに、監督の山本薩夫氏によれば、軍の将校でもメロドラマ好きは結構いたそうですから。
この原作は、ある意味ではキリスト教の持つ欺瞞性みたいなものを表しているとも解釈できるわけですから、あまり抵抗感もなかったということもあったのでしょうか。
いずれにしても、田園交響楽は堀口大學によって1938年に翻訳され、当時でもかなり話題になったようですね。それ以前からフランス文学の翻訳は日本でも積極的に行われてきたわけですから、そうした下地は十分にあったのかもしれません。
ただ、当のフランスにおいて映画化がなされるまでには、やはり内容が内容だけに相応の時間がかかったのでしょうか。
彼の諸作品は、ローマ教皇庁により禁書に認定された、ということもあったそうですから。
ただ、やはりかなりの人には読まれていたのではないかと思いますね。自国民のみならず。

by 伊閣蝶 (2011-09-20 12:41) 

Cecilia

伊閣蝶さん、再コメントありがとうございます!
山本薩夫監督と言えば私はあの「あゝ野麦峠」を思い出します。
また1938年頃の映画と言えばどうしても李香蘭が活躍した満映のプロパガンダ作品なども思い浮かべますが、「東京ラプソディ」が流行った時期でもありますね。自由な雰囲気があった頃ですね。

>この原作は、ある意味ではキリスト教の持つ欺瞞性みたいなものを表しているとも解釈できるわけですから

確かにそうですね。どちらにしてもどのような映画なのかまずは観てみたいです。
キリスト教がどの程度出てくるのか気になります。

>彼の諸作品は、ローマ教皇庁により禁書に認定された

今調べたら彼の死後に認定されているのですね。ローマ教皇庁の認定がどこまで有効なのかわかりませんが(カトリック国では売られてないとか?)、意外です。カトリック寄りの作家だと思ってきましたので。私は「田園交響楽」「狭き門」くらいしか読んでいませんので、彼の同性愛的傾向が作品にどの程度反映されているのか知らないのですが、気になってきました。

by Cecilia (2011-09-21 07:11) 

Cecilia

ユーフォさん、niceありがとうございます!

by Cecilia (2011-09-30 08:05) 

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