SSブログ

「マグダレンの祈り」で使われている音楽 [映画]

ずっと気になっていた映画を観てみました。

マグダレンの祈り [DVD]

マグダレンの祈り [DVD]

  • 出版社/メーカー: ショウゲート
  • メディア: DVD



詳細なあらすじなどはこちらをご覧ください。
マグダレンの祈り - goo 映画
マグダレンの祈り - goo 映画


私はやっぱり音楽面に惹かれました。
まず冒頭の音楽シーンで舞台がアイルランドであることを知りました。(字幕も出てくるのですが。アイルランドのダブリンと。)
"The well below the valley(谷間の井戸)"という曲が演奏されています。この曲のことは知りませんでしたが、近親相姦で出産した女性を歌ったトラッドなのだそうです。フレームドラムを叩きながら歌うのは神父なのでしょうか?神父がよく着ているスタンドカラーの黒服からそう思ったのですが。このフレームドラムはBodhranと言うそうです。実は必要があってフレームドラムをほしいと思っていたのですが、どうやって叩くものなのか初めて知りました。違う人の演奏ですがこんな感じです。取っ手の側しか見えませんが取っ手を持つこともありますが、その内側に左手を差し込んで指先で皮の裏面(?)を叩き、右手は撥(両端に玉がついたもの)を持って叩いています。
映画で使用されているBodhranには裁きにあっているイエス=キリストと群集とローマ兵と思われる絵が描かれてあります。


この曲はたいていこのドラムを使って歌っているようで他にも動画がありました。


映画の冒頭の結婚式のシーンでこの曲が流れるのですが、内容的にはかなり暗示的ですよね。(トラッドなので歌う人によって少々歌詞が違いますね。)

A gentleman was passing by
He asked for a drink as he got dry
At the well below the valley-o
Green grows the lily-o
Right among the bushes-o
"Me cup is full unto the brim(My cup is full up to the brim)
If I were to stoop I might fall in"
"If your true love was passing by(if your true lover)
You'd fill him a drink as he got
dry"
She swore by grass, she swore by corn
That her true love had never been born
He said "Young maid, you swear in wrong
For six children you had born"
"If you be a man of noble fame
You'll tell to me the father of them"
"There's two of them by your uncle Dan"
"Another two by your brother John"
"Another two by your father dear"
"If you be a man of noble esteem
You'll tell to me what did happen to them"
"There's two buried 'neath the stable door"
"Another two near the kitchen door"
"Another two buried beneath the wall"
"If you be a man of noble fame
You'll tell to me what will happen to mysel' "
"You'll be seven years a-ringing the bell"
"I'll be seven years a-ringing the bell
But the Lord above may save me soul from
porting in hell.

映画だけではなくアイルランドでは結婚式でこの曲はよく演奏されてきたようです。(「真実の愛を知れ」という戒めらしい・・・)

この曲がまず気になったのはどこかで聴いたことがあったからです。たぶんと言うかほぼ確実ですが、長女が良く聴いているゲームの音楽です。少しアレンジはしてあるのですがこの曲でしょう。ずっとケルトっぽい音楽だなあとは思っていました。
映画で演奏している人はおそらくケルト音楽の有名なミュージシャンなのでしょうね。激しく叩くところはなかなかかっこよいです。
この結婚式の場面で楽しそうに談笑している少女がこの直後に大変な目に遭うのです。


舞台となるマグダレン修道院には未婚の母になった少女など身を持ち崩した少女たちが更生のために収容され、洗濯請負の労働をさせられるのですが、そのすさまじい話は置いておくことにして、なぜか楽しそうな場面というのもありました。どう見ても修道院長は少女たちの労働で私腹を肥やしているのですが、司祭たちがやってくる場面ではなぜか”良い人”のようになっていることが多かったです。
お祭りのような場面があり、少女たちはレースのヴェールをかぶり青い上着を着て戸外へ並んで繰り出して行きます。この場面では「アメイジング・グレイス」が使われていました。(司祭が少女の一人と性的な関係を持っていたことがこの後の場面で明らかになります。)カトリック教会の話で「アメイジング・グレース」というのも不思議な気がしますが罪を悔い改めて神の愛に気がついたという曲を、聖職者でありながら罪を冒し続ける人々がいかにも敬虔な様子で行進している場面で使うというのはなかなか皮肉だなあと感じました。

もう一つ楽しそうな場面でクリスマスがあるのですが、そこでは"God Rest Ye Merry Gentlemen"が流れていました。

この場面の後、少女たちの何人かが修道院生活から抜け出すことができるようになるのですが、この"God Rest Ye Merry Gentlemen"というクリスマスのキャロルはイエス=キリストによって悪魔の力から解放される喜びを歌ったもので、これも暗示的ですね。

この映画、実話をもとにしたものということですが、舞台となった修道院は最近まで存在していたとのことで驚きました。

マグダレンの祈り (ヴィレッジブックス)

マグダレンの祈り (ヴィレッジブックス)

  • 作者: ジューン ゴールディング
  • 出版社/メーカー: ソニーマガジンズ
  • 発売日: 2003/09
  • メディア: 文庫



実際にマグダレン修道院で助産婦をしていた女性の手記とのことで読んでみたくなりました。



追記


マグダレン修道院についてMagdalene Laundriesで検索するといろいろ出てきます。
「マグダレンの祈り」と似たような内容のテレビドラマ(Sinners)がありますが、そちらのほうがより手記に近いのかなと感じました。(「マグダレンの祈り」でマーガレットという役をしているAnne-Marie Duff という女優が主演しています。)ほとんどの収容者が修道院内で出産するのですが、「マグダレンの祈り」では出産シーンがないです。もちろん未婚での出産なので子供たちはもらわれていきます。

「マグダレンの祈り」冒頭の"The well below the valley(谷間の井戸)"のあと、アイリッシュダンスの場面があり、そこで使われている楽器なども興味深いですね。(強姦される場面なので楽しくない場面ですが)

nice!(4)  コメント(6)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 4

コメント 6

伊閣蝶

「The well below the valley」これは凄い存在感のある音楽ですね。
どこかで聴いたことがあるような気が私もしましたが、かなり以前、坂本龍一さんが、こうした民族音楽を採取して編曲・演奏していて、その音楽の一つに近いものがあったような記憶があります。
残念ながら、そのレコードは手元にないのですが。
でも、たとえそうでないとしても、これは人の心の根源的な部分に語りかけてくるような音楽であるような気がします。
プリミティブであり、かつ一面ソヴァージュでもあるような。
こうした音楽を映像と拮抗して取り入れているとすれば、この映画の演出家は相当素晴らしい感性をお持ちのことと思います。
この映画、未見でしたので、是非とも観たいと思いました。

それにしても、フレームドラムのBodhran、興味深い楽器ですね。
私も演奏してみたくなってしまいました。

by 伊閣蝶 (2011-09-29 22:53) 

Cecilia

伊閣蝶さん、nice&コメントありがとうございます!
この映画はヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を取った作品のようですが、だから観たかったわけではありません。YouTube検索中に一場面を観ていて気になっていました。作品名がわかったので観てみたのですが重いテーマで見応えがありました。
記事は音楽面から書いていますので全体の感想はまたの機会にしますが、中にいる少女たちはたとえ逃げ出すことに成功したとしても社会が彼女たちを受け入れる状態にない限り幸せになれないのだと思いました。だから出て行きたくない人もいるのかな、と何となく感じたのです。それにしても修道院内での虐待はひどいもので、ナチスの収容所や女工哀史を思い出しました。社会的に問題になっていたのですね。カトリック教会での児童虐待の話は聞いていましたがマグダレン・ランドリーのことは知りませんでした。

「The well below the valley」のような音楽のほうがいかにも感動を呼び起こそうとして作られた曲よりも心を揺さぶられますね。
メロディーが出せなくても伴奏楽器として使うことができるのだということをあらためて認識しました。
by Cecilia (2011-09-30 08:00) 

Cecilia

ユーフォさん、niceありがとうございます!
by Cecilia (2011-09-30 08:01) 

Cecilia

kiyoさん、niceありがとうございます!
by Cecilia (2011-09-30 08:07) 

九子

こんばんわ。
申し訳ないけれど音楽のお話はなかなかついて行けませんが、マグダレン修道院のこのお話はとても興味がありました。
この歌詞を読むだけでもずいぶんおぞましい感じですものね。
昔は人権などという言葉には程遠い酷い行為が当たり前のようになされていたのでしょうね。
なんだかんだいっても、本当に少しずつですが昔よりも住みやすくはなっているのだと思います。


by 九子 (2011-10-03 23:43) 

Cecilia

九子さん、nice&コメントありがとうございます!
このような修道院が最近まであったとは驚きです。少しずつですが人権が守られる社会になってきているとは思います。使われている歌は修道院のことを歌ったものではなく伝承歌ですが、このような残酷な歌は世界各国にありますね。それらはどのような人間にも起こりうることを歌っているのではないのか、とも思います。
by Cecilia (2011-10-04 08:22) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。