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分割鍵盤のチェンバロ&バロックハープ [音楽鑑賞]

西山まりえさんのチェンバロ&バロックハープのリサイタルに行ってきました。

実を言うと西山まりえさんの演奏がすごく素晴らしいということは期待していなかったのです。バッハのゴルトベルク変奏曲を少しだけ聴いていますが思いっきりルバートしているのでイマイチのような印象がありました。もちろん全部聴いたわけではないのでちゃんとした評価はできません。
なぜ行ったかというと珍しいバロックハープの演奏が聴けるということ、行きやすい上に800円という低料金だということが理由です。

結論から言うと行って良かったです!
曲数が多かったわけではないのですが、曲の合間に必ず西山さんのレクチャーがあり、初めて聞く話題も多く勉強になりました。会場に集まった方の多くはおそらく近辺の高齢の方々で、古楽どころかクラシックにも縁がなさそうな方が多かったのですが、チェンバロとハープの響きを楽しまれていたように思います。あの中に古楽愛好家がどれだけいたかわかりませんが、古楽が好きな人にはとても興味深い話と曲ばかりでしたし、楽器が非常に珍しいもので、それだけでも聴きに行く価値がありますね。西山さんの演奏も素晴らしかったです。

まずチェンバロですが、普通は塗装されていて蓋の裏にも美しい絵が描かれていることが多いのですが、白木のような状態(まったくの白木ではなく蓋の裏は塗装されていますし、何らかの塗装はあると思います。)でした。何が凄いかと言うと、黒鍵です。そうそう・・・チェンバロってピアノとは鍵盤の色が逆で白鍵部分が黒で黒鍵部分が白であることが普通だと思いますが、このチェンバロはピアノと同じでした。ただし黒鍵部分が分割されていました。普通レ♯とミ♭は「同じ音」として扱われますが、この楽器だと「違う音」として演奏でき、ミーントーン(中全音律)での演奏が可能になります。この楽器を手に入れるのに8年かかったとおっしゃっていました。
バロックハープは弦が3列に張られているのですが、器用じゃないと演奏できない気がします。

これから用があるため詳細に書く暇がないのですが、プログラムは次の通りでした。

トッカータ(ジョヴァン二・ピッキ)
ロマネスカ上のパルティータ(ジローラモ・フレスコヴァルディ)
愛は喜びを与えてくれるが・・・(レオナルド・ダ・ヴィンチ)
ラス・フォリアス(作者不詳)

~休憩~

私の胸の奥にある苦悩は甘く(クラウディオ・モンテヴェルディ)
パッサカリア(即興演奏)
公爵のフランス風カンツォン(カルロ・ジェズアルド)
フランス風カンツォーネ第3番(ジョヴァンニ・サルヴァトーレ)
そう信じてしまうおバカさん(タルクイーニオ・メールラ)







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Enrique

チェンバロ演奏で思いっきりルバートする人がいて驚くのですが,強弱がつかないチェンバロでは,演奏が平板になるのを防ぐためと,演奏上の都合とがあるらしいです。
分割鍵盤は全部の黒鍵なのですか,それともDis音とEs音だけなのでしょうか?
通常のミーントーンではDis音とEs音(に限らず♯♭は異名異音です)が大きくずれます。12音におさめるには,どちらを採用するかでEs型とDis型があります。普通の鍵盤の場合だと調律を変えないといけないですが,分割鍵盤があれば,両方共用することができますし,黒鍵が全部分割鍵盤ならば調律替えなしでさらに多くの調にあったミーントーンが演奏出来るはずですね。
弦が3列のハープというのもすごいものです。見てみたいものです。
by Enrique (2011-10-04 00:44) 

Cecilia

yu-papaさん、はじめまして。
niceありがとうございます!
by Cecilia (2011-10-04 08:13) 

Cecilia

Enriqueさん、nice&コメントありがとうございます!
チェンバロ演奏ではルバートは割とよくあるのですが、西山さんのゴルトベルクはかなりすごいです。
http://www.youtube.com/watch?v=86-PeZhHiLk
分割鍵盤ですが、すべての黒鍵でなかったというのは確認しています。
この工房のサイトの写真の分割鍵盤みたいな感じでした。
http://www.h4.dion.ne.jp/~y-cemb/koubou.html
写真で何となくわかるかなと思いますが(黒鍵部分が少し盛り上がって見えるのが分割鍵盤)GisとAsも分割鍵盤ですね。(一番低いFisとGesも分割鍵盤になっているように見えます。)
西山さんが分割鍵盤のチェンバロで演奏している動画です。
http://www.youtube.com/watch?v=67UDKZxzcys&feature=related
西山さんのツィッターによればバロックハープもミーントーン調律とのことでした。
この曲を演奏されました。
http://www.youtube.com/watch?v=_lJitVx_6t8&feature=related

弦が3列のハープですが、こちらの動画(以前CDの紹介で取り上げたことがあります。)をご覧ください。
http://www.youtube.com/watch?v=Etzp2FuB1tE
by Cecilia (2011-10-04 08:40) 

伊閣蝶

分割鍵盤、こんな形状になっているのですね。
工房のサイトを拝見し、初めて知りました。
ミーントーンについては、私も以前興味を持ったことがあり、周波数を計算してシンセサイザーで作った経験があります。
リコーダーなどの管楽器では運指によって半音が微妙に異なっていたりします。
変ホと嬰ニ、嬰トと変イ以外でもそうなので、バロックの頃は純正の演奏を試みることができたのでしょうね。
因みに、日本の横笛(篠笛など)も、同じように運指や歌口の角度によって微妙に音をコントロールしますが、これは合奏で純正を目指す意識とはだいぶ違うようですね。
弦が三列のハープも驚きです。

しかし、このような内容の濃い演奏会が、800円で聴けるとは、そのことがさらに驚きでした。
by 伊閣蝶 (2011-10-04 12:04) 

Cecilia

伊閣蝶さん、コメントありがとうございます!
こちらにコメントくださっているEnriqueさんをはじめkotenさん、REIKOさんのところではミーントーンの話題が豊富です。
伊閣蝶さんも経験がおありですか。皆様、本当に凄いです。
リコーダーでは確かに運指によって音が違いますよね。今までは単に運指のしやすさしか考えていませんでしたが、純正の演奏をするための替え指は頭にありませんでした。
本当に内容が濃い演奏会で、私は咳止め薬のために少し眠かったのですが目が覚めてしまいました!
by Cecilia (2011-10-04 13:17) 

REIKO

とてもラッキーなリサイタルでしたね!
チェンバロとハープが両方聴けるとは。
(バロックハープは、鍵盤から転向する人が結構いるようです)
白木のチェンバロは、おそらく17世紀初期のイタリア・タイプだったと思うのですが、これにはミーントーンがバッチリ合うんですよね!
シャキッと輪郭のはっきりした響きは、ミーントーンでないと出ないのです。
同じ楽器でも、他の音律(例えばヴァロッティなど)では、柔らかくて生ぬるい響きになってしまいます。
もちろんそれが向いている曲もありますが、その場合は17世紀初期のイタリアの楽器は使わないはずなので。

西山さんのハープの演奏もリンク先で聴きました。
紹介ありがとうございます!
素晴らしい響きですが、これもミーントーンだからで、平均律だったらとてもこういう風には聴こえないし、フレスコバルディなんてまるでつまらない思います。
(kotenさんのところにも似たようなコメント書いたのですが)このバロックハープ演奏を聞いて、普通は「バロックハープって綺麗な音ね」という感想を、多くの人は持つと思います。
しかし実は、楽器自体よりも「音律」の影響がはるかに大きいのです。
みんな気づいていないけれど、音律はすべての音楽の根底にある、非常に重要な要素なのだ、と力説したいですね!(笑)
by REIKO (2011-10-05 18:06) 

Cecilia

REIKOさん、コメントありがとうございます!
とてもラッキーなリサイタルでした。その市では800円コンサートの企画が今後も続くようです。(ワンコインじゃないというのがビミョーですね。笑)
西山さんのハープは単なる余興なのかと思っていたのですが、スイスのバーゼルで勉強されていた時にかなり本格的に勉強されていたようですね。(この時チェンバロも学ばれていたのだと思いますが)バロックハープの話の時にその時ついていたドイツ人の先生から日本人は古楽器に向いた体だとしみじみと言われたという話をされていました。バロックハープ、細かい芸が必要と言う感じがします。

>他の音律(例えばヴァロッティなど)では、柔らかくて生ぬるい響きになってしまいます。

なるほど。ヴァロッティが私には一番身近なのですが、確かに柔らかい感じがします。
今回の演奏は「シャキッと輪郭のはっきりした響き」でした。
休憩時間には男性の方がハープもチェンバロも調律していましたが、皆様珍しい楽器に興味津々。楽器の周りはとても混雑していて、ハープが倒れないかひやひやしました。勝手に触る人がいないかそれも心配でしたが、幸いそういうことはありませんでした。調律の方、丁寧に説明されていて、調律の暇もなかったように思えましたが・・・。

>音律はすべての音楽の根底にある、非常に重要な要素

自分は耳が悪いので理解できないのだろうと思っていましたが、こうしてまとまった時間(今回は2時間)集中して聴いていると理解できたような気がします。

>白木のチェンバロは、おそらく17世紀初期のイタリア・タイプ

そうおっしゃっていました。
by Cecilia (2011-10-06 09:05) 

March Hare

前にも書いたと思いますが、私は西山まりえさんのチェンバロは評価していません(それでもCDは3枚もっていますが)。
しかしながら、先月10/20に王子ホールで、波多野睦美さんの「歌曲の変容シリーズvol7」を聴いた時に、西山さんが伴奏で、中世ハープ・ルネッサンスハープ・バロックハープの3台を弾き分けたのを聴いて、少し見直しました。
アンドリュー・ローレンスキングの影響を受けているのかな。ハープ好きなら聴いて損はなかったコンサートだったと思います。
by March Hare (2011-11-11 18:36) 

Cecilia

March Hareさん、コメントありがとうございます!
はい、その時のコメントをとてもよく覚えていましたので、私も先入観がかなりありました。ただ、ブログ友で高く評価されている方もいらっしゃいましたので実際聴いてみてどうかとは思っていました。動画で聴いた「ゴルトベルク変奏曲」はイマイチ好きになれないとは思いましたが、今回のコンサート内容は非常に素晴らしかったです。ミーントーンに関してここにコメントくださっているEnriqueさん、REIKOさん、そしてkotenさんのブログで熱く語られていて私はよくわからないながらも興味を持っていました。
ミーントーンの世界を味わうことができ、とても興味深く楽しいコンサートでした。
by Cecilia (2011-11-12 05:28) 

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